芥川龍之介の「さまよえる猶太人」

みなさん、こんにちは。

今日は話題をこれまでとは全く違う話に変える。それは、芥川龍之介
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の「さまよえる猶太人
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という短編(大正6年5月10日作)である。ここ最近読んだものの中では、もっとも奇妙で面白いものであった。

これは、西洋社会で口承で語られ続けてきたと言われる「謎の人物」のお話である。その人物はヨセフというユダヤ人で、キリストの磔の時代に生きていたが、キリストが磔になる直前にヨセフの家の前を通る際に休憩を求めたが、ヨセフが周りの祭司などを気にしてさっさと行けとばかりに、イエスを冷たくあしらいおっぱらうように小突き回して追い払った。その際にイエスがヨセフに「行けと云うなら、行かぬでもないが、その代り、その方はわしの帰るまで、待って居れよ。」と言ったという。その言葉はヨセフの心の底に焼き付くように残り、いてもたっていられなくなり、イエスの足元にひれ伏してイエスの足に接吻しようとしたが、もう遅く、イエスはゴルゴダの丘に連れ去れて行くところであった。それ以後、ヨセフには呪いがかかり、イエスが再臨するまで死ぬことができず、世界中を旅することになったというのである。そしてこのヨセフを見たというもの、ヨセフと話したというものが、何百年後、そして何百年後に現れて記録に残したのである。

芥川龍之介の研究は、はたしてこのさまよえるユダヤ人のヨセフが日本にも来たことがあったのだろうか、という疑問に答えることであった。それをとうとう見つけたぞ、というのがこの短編である。芥川龍之介は、聖フランシスコ・ザビエル
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が日本に来た頃、ザビエルがヨセフと会ったという記録に行き当たったのである。

『自分は最後の試みとして、両肥及び平戸天草の諸島を遍歴して、古文書の蒐集に従事した結果、偶然手に入れた文禄年間の MSS. 中から、ついに「さまよえる猶太人」に関する伝説を発見する事が出来た。』とある。『この覚え書によると、「さまよえる猶太人」は、平戸から九州の本土へ渡る船の中で、フランシス・ザヴィエルと邂逅した。』という。

はたして「さまよえる猶太人」の出で立ちとはどんなものか? というと、「彼の上衣は紫である。そうして腰まで、ボタンがかかっている。ズボンも同じ色で、やはり見た所古くはないらしい。靴下はまっ白であるが、リンネルか、毛織りか、見当がつかなかった。それから髯も髪も、両方とも白い。手には白い杖を持っていた。」という感じらしい。

「ふらんしす上人さまよえるゆだやびとと問答の事」とはどのようなものだったか?
季節は秋で海面は魚の鱗のようにまたたく昼の海上でイチジクやザクロを積む商船の上であった。3人のヨーロッパ人がいた。ザビエルが祈祷した時、その猶太人も見事に祈祷した。そこでザビエルがいぶかしがって、話しかけると、当時の冒険家のヨーロッパ人と違って、西洋の歴史から何から何までよく知っている。ザビエルとお伴のシメオンイルマンも舌を巻くほどであった。そこで、ザビエルが
「あなたは何者か?」
と聞くと、男は
「私は彷徨える猶太人である」
と答えた。
その後ザビエルとヨセフはさまざまな話をしていくうちに、例のイエスキリストのゴルゴダの丘の磔の話にまで行き着いたというのである。

この「さまよえる猶太人」というのは、現実のユダヤ人の放浪生活を比喩的に著したエピソードのようなものなのか、あるいは、イエスの教えに歯向ってはならないという一種の教えのようなものなのか、あるいは現実の事実のお話なのか、その辺の真偽のほどは分からない。しかし、非常に面白い話である。

芥川龍之介の作品には他にも非常におもしろいものがあるようである。
悪魔
これには、戦国時代の南蛮人が織田信長と会っていかなることをしていたかということが描かれている。
煙草と悪魔
これには、煙草がどのようにして日本に持ち込まれたかかがよく描かれている。この時の悪魔はさまよえる猶太人の中のザビエルのお伴のイルマンであったというのであるから摩訶不思議な話である。
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これらを見ると、西洋人という人種は今も昔もまったく変わらないということだろう。また同時に日本人のお人好しも今も昔も変わらないということである。実に興味深い。これからは再び芥川龍之介の時代なのかも知れない。いずれにせよ、こういう観点は「坂の上の雲」の司馬遼太郎や他の歴史小説家などの日本の文学人たちにはないものである。
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  by Kikidoblog | 2009-11-22 15:36 | 人物

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