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「ナッシュ均衡」:ビューティフル・マインドとはこういうもの!?2

(つづき)

1872
規制改革会議のジレンマ
KI
2002/07/24 08:02

今日は重要なニュースが2つほどあったので、ここに引用させて
もらおう。

あ)教育・医療に株式会社を 規制改革会議中間とりまとめ
http://ntt.asahi.com/politics/update/0723/016.html

「 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は
23日、経済活性化のための規制改革を提言した「中間とりまと
め」を公表した。事前に各省庁の合意を得る手法はとらず、会議の
主張と省庁側の反論を併記したのが今年度の特徴で、目玉として教
育・医療分野への株式会社参入や規制改革特区導入が盛り込まれ
た。関係省庁は強く反発しており、年末の答申決定までもめそうだ。
 中間とりまとめは、(1)新しい事業の創出(2)民間参入・移
管拡大による官製市場の見直し(3)活性化に資するビジネス・生
活インフラ整備(4)事後チェックルールの整備(5)規制改革特
区の5章構成で、省庁横断的に規制改革案を整理した。厚労、文
科、農水、財務などの省庁が反論を提出した。
 医療・教育など社会的分野への株式会社参入について、同会議が
「消費者の選択の幅を拡大させ、サービスのコストや質の向上に寄
与する」としたのに対し、省庁側は「医療の効率化は経営面の競争
でなく、経営の近代化や情報開示による医療の質の面で競争促進を
図るべきだ」(厚労省)、「学校経営と営利を目的とした株式会社
は相いれない」(文科省)と反論した。
 規制改革特区制度では、緩和する規制を同会議は「可能な限り幅
広くする」としたが、省庁側は「生命・身体・健康、労働者保護の
規制は実験や試行になじまない」(厚労省)、「児童ポルノや銃
器・薬物の取り締まり等で実験的に規制改革を実施すれば公共の安
全と秩序の維持に不可逆的な支障を及ぼす」(警察庁)と反論して
いる。
 中間とりまとめを両論併記にしたことについて、委員の一人は
「抵抗勢力の主張を浮き彫りにし、政策形成過程を透明化する狙い
だ」としている。宮内氏も記者会見で「双方の主張を読み比べれば
争点がはっきりする」と利点を強調した。
 しかし、年末の答申はそのまま閣議決定されることが前提となる
ため、今後の折衝で内容が大きく後退する懸念もある。(23:09) 」


い)株式会社の学校経営、年度内参入を明記…規制改革会議
http://www.yomiuri.co.jp/01/20020723it15.htm

「 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は
23日、規制改革に関する中間とりまとめを決定し、小泉首相に報
告した。学校経営や医療機関に対する株式会社参入を今年度中に実
施すると明記したほか、特定地域に限って規制を緩和する「規制改
革特区」は、国が財政支援をしない「自治体主導型」とするよう提
言したのが特徴だ。これを踏まえ、年末に第2次答申を策定する。
 中間とりまとめでは、公的性格の強い分野への株式会社参入につ
いて「多様なニーズへの対応や創意工夫を助長し、市場競争を促進
する」と評価したうえで、医療、福祉、教育、農業の4分野での参
入を積極的に進めるべきだとしている。
 学校経営への株式会社参入については、「顧客である学生をない
がしろにした教育は考えられない。学校法人と株式会社に差異はな
い」などと強調。新規参入会社への助成について、既存の学校法人
と同水準とするための関連法令の整備も提言した。
 医療機関への株式会社参入については、「参入を認めない積極的
な理由は存在しない。容認すべきだ」として今年度中の実施を明
記。福祉、農業分野についても、株式会社の参入範囲の拡大を求め
た。
 また、官民分担の見直しとして、政府や都道府県が実施している
運転免許講習や、日本銀行券の印刷、刑務所や拘置所の維持・管理
など約60事業・事務の民間移管を盛り込んだ。
 規制改革特区については、あらかじめ特区で実施できる規制緩和
を幅広く盛り込んだ「通則法(基本法)」を制定し、地方自治体が
選択するよう提案した。国による税減免や補助金などの財政措置は
見送ることを明記した。
 具体的な特区の例として、株式会社設立要件の緩和や国立大学の
長への外国人研究者の登用、図書館や学校などの公共施設の民間へ
の運営委託などを列挙した。 (7月24日00:48)」


これらは、政府が主催する改革会議、あるいは審議委員会、あるい
は諮問委員会というような組織と、官僚機構の省庁の役人の
交渉という、今や日本社会でよくお馴染みになったもののやり取り
の一つだ。

アメリカでは大統領内閣と議会が交渉するのが普通だが、議会そっち
のけで官僚と政治家が交渉するし、そして、議会に話が出る頃には、
もう話合う必要はなく、問答無用で採決するっていうのが、
日本独特のシステムになっている。もちろん、これは議院内閣制で
自民党連立政権のなせる業。

つまり、言い換えれば、国内に2つの政府、あるいはたくさんの
政府があるというようなものだね。内閣と各省庁分だけ政府がある
ようなもので、その中で内戦しているようなものと言え、およそ
真っ当な国のやり方ではないと言える。まあ、前から言っているよ
うに、アフガンとそれほど日本は大差ないわけだ。


さて、問題は、こういう交渉を行うときに、例のナッシュ論法を
改革会議のお偉方は理解しているかどうかっていうこと。

前に、「# 1658 核兵器削減のジレンマ:ブッシュとプーチンの対
立と交渉」で書いたような戦略が必要なんですな。

例えば、学校の株式会社設立問題で言えば、まずはじめに、

改革会議\文部省| 学校法人保存 | 会社可能
———————————————————————————
学校法人保存  | ともに保存  | 保存、会社化
        |(現状維持)  |(あり得ない)
———————————————————————————
会社可能    | 会社化、保存 | ともに会社化
        |(交渉決裂)  |(学校民営化)
———————————————————————————

となる。しかし、これでは交渉決裂になって終わるだろう。
お互いに適当に自分の主張だけ繰り替えして終わることになる。
つまり、時間と税金の無駄に終わるっていうこと。

交渉決裂の時の国民からの反応の度合いが、ナッシュ均衡の
現状維持か学校民営化のどちらに行くかが決まる。交渉決裂
でも国民が怒らなければ、現状維持へ進み、交渉決裂では、
税金を無駄に使った責任を問い国民が怒れば、学校民営化へ
進むだろう。

だから、国民会議側はどこまで世論を味方につけることが
できるかで、結果は変わるだろう。国民世論があてには
できないと思うのであれば、次の戦略に変えなくてはいけない。
つまり、上の2X2のマトリックスではなく、3X3の
マトリックスにするわけだ!

改革会議\文部省| 学校法人保存 |一部会社化一部保存  | 会社化
————————————————————————————————————————————
学校法人保存  | ともに保存  |           | 保存、会社化
        |(現状維持)  |(あまりあり得ない) |(あり得ない)
————————————————————————————————————————————
一部会社化   |(交渉決裂   |ともに一部会社化一部 |(あまり
一部保存    |しやすい)   |保存(現実的妥協案) | あり得ない————————————————————————————————————————————
会社化     | 会社化、保存 |           | ともに会社化
        |(交渉決裂)  |(交渉決裂しやすい) |(学校民営化)
————————————————————————————————————————————

あるいは、

改革会議\文部省| 学校法人保存 |  財団化     | 会社化
————————————————————————————————————————————
学校法人保存  | ともに保存  |          | 保存、会社化
        |(現状維持)  |(あまりあり得ない)|(あり得ない) ————————————————————————————————————————————
財団化     |(交渉決裂   |ともに財団化    |(あまり
        |しやすい)   |(現実的妥協案)  |あり得ない) 
————————————————————————————————————————————
会社化     | 会社化、保存 |          | ともに会社化
        |(交渉決裂)  |(交渉決裂しやすい)|(学校民営化)
————————————————————————————————————————————

を遡上に乗せる。すると、官僚側も歩み寄る道もあり得る。

まあ、こんな感じの交渉術を心掛けない限り、いつも日本
でお馴染みのまずいやり取りで終わるんでしょうなー!

まあ、こういうことを知らないで交渉についているとすれば、
アマチュア、あるいはお子さまですなー。とてもアメリカや
ロシアとは交渉できないでしょうな!

じゃ、またーね。

1895
トップ30COEは想像付く結果に終わりそうですな!
KI
2002/07/28 14:47
男性 自由業 44歳 O型 海外
S0さん

いやー、さすがはSOさん、実に良いところに目を付けますね。

私の考えでは、大学のクローン禁止を行うと、おそらく
第2世代になると、かなり大学が今とは違った雰囲気に
変わるだろうと予想しています。この世代では、もはや
大学名による純潔主義がなくなり、非常に開放的な
大学人が生まれるからですな。たぶん、今の大学が一番
先に行うことは、これでしょうね。だから、政治家が
大学クローン禁止法案を作ってしまえば、それで済む
わけですな。

さて、もう一つの「21世紀COEプロジェクト」のお話は
結構生々しくて面白いですねー。SOさんのお話をまとめると
こんな感じですな。

当初の案            → 実施された案
----------------------------------------------------------
競争原理の導入         → 偽の競争原理の導入
----------------------------------------------------------
専攻内の競争          → 専攻系の競争なし
特別な教授だけがCOE教授になる → 10人だけの業績評価のみ
ダメ教授はリストラされる      お名前頂戴の外部客員教授OK
                  ダメ教授も温存
----------------------------------------------------------
専攻間の競争          → 専攻間の競争なし
専攻系(学部)に序列を付ける    序列なし
----------------------------------------------------------
大学間の競争          → 大学間の競争なし
新しいトップ30で競争     → 東大序列の既存のトップ30で競争
独法化トップ30        → 現状維持トップ30
----------------------------------------------------------

これを見る限りでは、
#1400 囚人のジレンマと大学のジレンマ
で私が論じたのと同じレベルで話が進んだっていうことですなー!

「さて、日本の大学の独立行政法人化問題の場合を考えてみよう。
そこでこれを「大学のジレンマ」と呼ぶことにしよう。
独立行政法人化に際して、文部科学省はそれぞれの大学にこう言った。
「もしあなたの大学が独立行政法人化に賛成して改革するなら、
トップ30校に選んでやろう。」

文科省\大学| 賛成        | 反対
—————————————————————————————
守る    | 独法化トップ30  | 現状維持トップ30
—————————————————————————————
守らない  | 独法化トップ30以外| 現状維持      」

いずれにせよ、日本の官僚も政治家も大学人もナッシュ論法は
まったく理解していないようですな。私が
#1872 規制改革会議のジレンマ
で論じたように、すぐに3X3のマトリックスに持っていかないと、
交渉はできないんだけどねー!

さて、文部科学省はこのうちのどれを選択するでしょうねー?
最初のSOさんの話だと、現状維持トップ30の場合に行きそうだから、
これは、日本の国立大学が国に対してまったく協力しなかったって
いうことを意味するよねー!国民不在のやり取りですな!
まさに外務官僚と政治家のやりとりといっしょですなー。

いやはや、世も末ですなー!

じゃ、またーね。

というわけで、何かが「正しいか、正しくないか」という1つのジレンマに陥った時、正しい場合と正しくない場合の双方の状況で最低2つずつの前提が存在する。仮に前提アと前提イとしよう。(こういう前提を「暗黙の前提」という。普通は無意識のうちに前提を正しいものとしてしまう。)もし我々が普通の場合、前提アと前提イの両方が成り立つ場合にそれが正しいと信じるという「解釈」を行っているとする。すると、次のようなジレンマゲームがそこに存在するわけである
前提ア\前提イ|◯       |X
————————————————————————————
◯      |正しい(◯、◯)|(◯、X)
————————————————————————————
X       |(X、◯)    |正しくない(X、X)    
 こういう場合に、我々は普通無意識のうちに、暗に自分が仮定している前提の片方が否定される場合(成り立たない場合)における損得勘定、つまり利得の大きさを見積もって、その損得勘定の結果で結論としての「正しいか、否か」の解釈を変えるのである。言い換えれば、(◯、X)の場合と(X、◯)の場合の損得勘定から、結論が変わる。これが「ナッシュ均衡」の変化というものである。普段は、「正しい(◯、◯)」という場合が「ナッシュ均衡」なのであるが、(◯、X)の場合と(X、◯)の場合の条件が変わると、突然、「正しくない(X、X)」の方が良いということが生じるのである。

演習問題1 尖閣諸島を領有すべきか否かをナッシュ均衡の論点から議論せよ。

  by Kikidoblog | 2012-11-16 12:09 | 昔の拙ブログ・記事

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