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プロ野球のボールはスーパ−ボール(の芯)?:反発係数の謎!?

スーパーボール
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みなさん、こんにちは。

いやはや、これまた”痛〜〜い”ニュースが炸裂。日本野球機構が今年採用したボールには、内部に特別仕様の核が詰まっていたという。どうやらそれが原因で今年のホームランは”異常に”増えたらしい。バットにかすればホームラン。芯に当たれば、確実にホームラン。その理由がこれだという。
ゴム材の配合比率を調整 ミズノ社が説明

 ミズノ社の担当者は12日、記者会見で、ボールの芯のコルク材を覆うゴムの材質を変えていたことを明らかにした。天然ゴムに低反発性のゴムを混ぜることで反発力を調整しており、その配合比率を下げることで反発係数を上げたという。

 プロ野球の使用球の反発係数は、0.4134~0.4374に収まるように定められている。2011年の導入時、統一球は下限の0.4134を目指していたが、それを下回るものがあったため、今季の球は目標を0.415~0.416に設定。時速144キロの球を126キロのスイングで打ち返し、打球の角度が27度だった場合、飛距離が約40センチ伸びるという。

統一球の問題で会見に臨む(左から)NPBの井原敦事務局次長、下田邦夫事務局長、加藤良三コミッショナー、ミズノの鶴岡秀樹取締役、久保田憲史部長=12日、東京都千代田区(撮影・桐山弘太)
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これは結構古典物理学として面白い。今年の大学入試の問題にしたら良いのではないだろうか?
【問題】
速度uで水平に来たボールを速度vのバットで打った場合にそのボールが角度θでフライになったとする。ボールの反発係数をkとした場合、そのボールの落下する最長距離を求めよ。ただし、空気抵抗は無視してよいものとする。重力加速度はg = 9.8m/s^2である。

【解答】
ボールへのインパクトの速度Vはバットとボールの相対速度であるから、
V=u+v。

このVは水平方向であるから、バットで打った後のボールの初速度は、反発係数kだから、V0=kVcosθ。

さて、水平方向のボールの初速度は、
Vx(0) =V0cosθ。
垂直方向は、
Vy(0) =V0sinθ。

t秒後のボールの速度は、垂直方向が、Vy(t) =V0sinθ- gt。
水平方向が、Vx(t) =V0cosθ。

ボールの最高点までの時間TはVy(T) =0の時だから、0 = V0sinθ- gTを解いて、
T = V0 sinθ/g。

したがって、この2倍の2Tが水平方向の最長到達距離Lまでの時間だから、
L = V0cosθ×2T =2(V0)^2cosθsinθ/g = (V0)^2sin 2θ/g。
ここで、x^2 = x・x 。

これに最初のV0=kVcosθを代入して、
L = k^2 (V^2/g)sin 2θ(cosθ)^2。

仮に水平に来たボールを打つのではなく、最初からθの角度で若干上から来たボールをそのまま同じ方向に打ち返す場合、V0=kVだから、上の式の(cosθ)^2はいらない。(cosθ)^2= 1。
したがって、
L' = k^2 (V^2/g)sin 2θ。

さて、新聞記事のデータは、
(昨年まで)k = 0.4134( ~ 0.4374)。
(今年)k = 0.415~0.416。
角度θ= 27度。
ピッチャーのボールの速度 u = 144km/h = 40m/s。
バット速度 v =126k/h = 35m/s。
バットとピッチャーボールの相対速度 V = 270km/h =75m/s。

kを除いて、これらをLに代入すると、
L = k^2 (V^2/g)sin 2θ(cosθ)^2
= k^2[ (75m/s)^2 sin (54度)(cos(27度))^2]/9.8m/s^2
= k^2 ・357.6 m。
仮に水平に来たボールを打つのではなく、最初からθの角度で若干上から来たボールをそのまま同じ方向に打ち返す場合、上の式の(cos(27度))^2はいらない。すなわち(cos(27度))^2=1とできるから、
L' = k^2 (V^2/g)sin 2θ
= k^2[ (75m/s)^2 sin (54度)]/9.8m/s^2
= k^2 ・430 m。

まず昨年までのk = 0.4134を使えば、
L1 = (0.4134)^2 ・357.6 m = 0.171・357.6 m = 61.15m。
L1' = (0.4134)^2 ・430 m = 0.171・430 m = 73.53m。

今年のk=0.415を使えば、
L2 = (0.415)^2 ・357.6 m = 0.172・357.6 m = 61.5m。
L2' = (0.415)^2 ・430 m = 0.172・430 m = 73.96m。
したがって、その差は、ΔL = L2 - L1 = 61.5m -61.15m = 0.35m = 35 cm。
ΔL' = L2' - L1' =73.96m -73.53m = 0.43m = 43 cm。

したがって、おおよそ昨年と今年では35cm〜43cm程度の差が出る。

とまあ、ひょっとしてこんな感じの計算を行ったらしいですナ。新聞記事にある「飛距離が約40センチ伸びる」という主張と一致する。

しかしながら、この計算にはトリックがある。なぜなら、角度27度というのは、最長到達距離が61.15m〜73.96m程度しかないということである。フェンスまでだいたい90m以上ある。だから、この距離では凡フライ。外野フライでしかないのである。ホームランにはならない。

空気抵抗を無視した場合の最長到達距離はθ=45度の場合だから、この場合は、sin2θ=sin(90度) =1である。したがって、この場合には、
L = k^2 (V^2/g)(cosθ)^2 = k^2 (cosθ)^2・573.97m 。
L' = k^2 (V^2/g) = k^2・573.97m。

すると、k = 0.4134ならば、L' = (0.4134)^2 ・573.97m = 98m。
k = 0.415ならば、L' = (0.415)^2 ・573.97m = 98.85m。

したがって、85cm程度伸びることになる。この場合であれば、十分にホームラン、フェンスオーバーできる。

しかしながら、実際の試合を観る限りでは、あまりにホームランボールが飛びすぎていて、およそこんな計算のようではない。まさに子供が遊ぶスーパーボールを打った時の感じなのである。

それもそのはず、ピッチャーの速度は時速160キロ近く出すものもいるし、バッターのスイングも時速126キロを超えるものもいる。144キロと126キロに設定する理由はあまりないように見えるのである。常にその時代の最高速度に合わせた方がフェアではないだろうか?

どうも腑に落ちない何かがまだ残っているようですナ。しかし、実に興味深い話である。

  by kikidoblog | 2013-06-13 09:40 | マスゴミ

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