昔のブログから:「アット・ホーム・ダッドは一番短命なの?」

みなさん、こんにちは。

さて、この次のメモの参考として先にここに昔の2005年の拙ブログdoblogの記事をメモしておこう。以下のものである。
[ 16:42 ] [ 健康・医学 ]
2005/01/25のBlog
アット・ホーム・ダッドは一番短命なの?

日本でも古来から、”角がとれる”、”人が丸くなる”、”牛尾鶏頭”などという言い方がある。こ の話と”アメリカでは専業主夫の寿命が一番短い。”という話と”日本では宗教家が一番寿命が長い 。”という話と全部関連があるのだと私が言ったら、多くの人は”そんなー?”と疑いの目を向ける ことだろう。ところが実はこれは事実なのである。

最近、とは言ってももう3年も前の話になるが、米国の調査が報告:専業主「夫」は短命!?という記事があったようだ。

この記事によれば、男性の場合、『アメリカ内の数ある職業で一番短命なのは専業主夫である。』という統計結果が出た、という。そしてその一番の原因が”ストレス”であるというのである。(私も ”専業主夫”の1人なのでこれは実に重要な問題なのである。)

一方、最近日本でも似たような研究を行った人がいた。その人とは郡山女子大学の森一教授である。 (たとえば、第23話 宗教者と長寿を見ると良い。)
上位の職業は以下の通りである。

一位 宗教家
二位 実業家
三位 政治家
四位 医師

この教授の結果によれば、日本でいつの時代でも一番寿命が長いのが、やはり男性の場合、宗教家で 、その次が実業家、3位が政治家、4位が医師と来る。そしていわゆるサラリーマン(雇われ労働者 )がその次に来て、やはり最後には失業者や専業主夫が来るのであろう。この人の話では一番下の方 が調べられていないようだ。

この原因(つまり、僧侶が長寿である理由)として次のものをあげた、という。
(1)過食を避け、心身の修行に励んだこと。
(2)森林浴効果や読経、説教による精神の安定。

以上の日米の結果はそれなりにもっともらしい。しかし、この問題に実はすでに2000年に正しく答えていた人がイギリスにいた。それは、マット・リドレー博士という科学ジャーナリストである。 この人が2000年に出版した
ゲノムが語る23の物語』(紀伊国屋書店、2000年)
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の『第10染色体、ストレス』という章にすでにこの答えに対応する事実が語られていたのである。私は最近この本をずっと読んでいるので、最初の職業別寿命の話題がリドレー博士の言説とぴったりであるこ とを発見したのである。

これをちょっと紹介しておこう。

まず、人間と猿は遺伝子にほとんど差がない、という事実がある。チンパンジーで98%、マントヒヒで94%が人間と一致している。このために、これらの猿族と人間は外界から受けるストレスに対 してまったく同じ遺伝子システムを利用しているのだという。これがこの問題の鍵である。

では、どういうメカニズムか?

これは、俗に副腎皮質ホルモンの1つと呼ばれるコルチゾール系のストレス反応メカニズムであり、 これが全く人も猿もいっしょなのである。したがって、チンパンジーやマントヒヒの社会で起こって いることは、ほぼ100%間違いなく人間社会でも起こっていると考えられるのである。

そこで、科学者はチンパンジーやマントヒヒを使っていろいろ社会実験をしてみた。中でもマントヒヒを使った実験が有名のようだ。

これは、若いマントヒヒのオスはある年齢(おそらく人間の成人年齢に対応)に達すると、自分の群れ(ファミリー)から離れて他のファミリーに加わる、という習性がある。そこで、この若いマントヒヒのオスの血液を調べて血中コルチゾール濃度やテストステロン(男性ホルモン)濃度の変化を調べるのである。

すると、新しい部族に入り立ての頃は、自分の地位を上昇させるために非常に”攻撃性”が増す。こ の初期にどうやら『血中コルチゾール濃度やテストステロン(男性ホルモン)濃度が最大になる。』 そして、度重なる挑戦を行って最後にその群れのボスになると、それらの濃度が下がる、というのである。

では、この意味とは何か?

実は、”血中コルチゾール濃度”は受ける”ストレス”が大きければ大きい程上昇する。しかし、コ ルチゾールは白血球のTCFという遺伝子に作用し、インターロイキン2という酵素の生成を阻害する。その結果、白血球の寿命が短くなり、免疫系が弱くなる、というのである。つまり、『ストレス にさらされ、血中コルチゾール濃度が高くなると、免疫が破壊され、病気にかかりやすくなる』、と いうことである。

ところが、その一方で、コルチゾールは、コレステロールから生成されるために、コルチゾール濃度 が上昇するためには、血中コレステロール濃度が下がることを意味する。このために、血中になくてはならないコレステロール、いわゆる”善玉コレステロール”値を極端に下げてしまうのである。こういうわけで、血中コルチゾールが増えると、血管に垢がたまりやすくなり、動脈硬化を引き起こしやすくなる。結果、心筋梗塞などになりやすくなる。

そればかりか、コルチゾールはそれまで眠っていたコルチゾール受容体を持つあらゆる遺伝子のスイッチをオンにしてしまう。そのためさまざまな問題(たとえば、発ガンなど)を生じやすくなるのである。身体に良いことは何もない。

つまり、マントヒヒ(や人)が社会でストレスを受けると、血中コルチゾールが増え、さまざまな遺 伝子スイッチをオンにし、善玉コレステロール濃度を下げ、動脈硬化や病気になりやすくなるのである。

この結果、動物園の猿の場合、動脈血栓が見られるのは、階級ピラミッドの一番下の底辺にいる猿である、ということになる。

リドレー博士は、もちろん、その本で人間の場合の例も紹介した。それは、イギリスの国家公務員の場合で、『階級の低い国家公務員程心臓病にかかりやすい』、という驚くべき発見である。下級公務 員は上級国家公務員の4倍心臓病にかかりやすい。さらに、細身でタバコを吸わない用務員のほうが 、太めでタバコを吸う事務次官より心臓病にかかりやすかった、というのである。さらに類似の結果は、アメリカのベル社でも得られたという。

さて、ここで最初の問題に戻ろう。『専業主夫の寿命が一番短い』という話である。つまり、宗教の僧侶、会社の社長、国家公務員の事務次官、あるいは国立大学の教授など、いわゆる社会ステイタスの高い”猿”(いや失礼、人間)は、栄養状態も良く、ストレスにあってもそれなりに血中コルチゾールが低い。そのため、病気になりにくい。言い換えれば、
(3)栄養が良く、ストレスが少ない。
ということが一番の原因であり、最初にあげた
(1)過食を避け、心身の修行に励んだこと。
(2)森林浴効果や読経、説教による精神の安定。
というのは、そのための条件の1つにすぎなかった、ということである。

要するに、ちまたで言われてきた、”角がとれる”、”丸くなる”という意味は、いわゆる”割腹が 良くなる”ということである。”割腹が良くなる”ということの直接の意味は、太るということであ るが、それは、地位が上がると給料が上がり、それに連れて食生活が良くなり太る、社会的自信もつ く、という意味でもある。と同時に、血中コレステロールが上がり、血中コルチゾールが下がり、ス トレスに強くなる。その結果、ぎすぎすした人間から円満な人間となる、ということであろう。

また、”牛尾鶏頭”の意味も理解できる。大きな組織の末尾につくこと程ストレスを生むことはないからである。それよりはたとえちっぽけであれ、その組織のトップになった方が受けるストレスは少ないのである。これが、住職や実業家や上級官僚の寿命が比較的長い、ということであろう。

以上のことから、コレステロール値を下げる食事が必ずしも良いとは言えないのである。なぜならコルチゾールはコレステロールがその原料となり、コレステロールが少ないとストレスに弱くなるからである。このコレステロールのお話はもっと恐ろしい話と繋がるが、これはまたの機会としようネ。

[ 更新日時:2005/09/23 16:34 ]
この記事のURL: http://www.doblog.com/weblog/myblog/19256/935258#935258

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  by kikidoblog | 2013-09-13 12:44 | 昔の拙ブログ・記事

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