ファミリービジネス4:「バレル研磨」の誕生、研磨業を変えた革命技術

(つづき)

昔のことを思い出せるうちにどんどんメモしておこう。というのも、私の父もいまでは86歳をすぎ、いつ逝ってしまっても不思議ではないという年齢に入ったからである。私自身、昔脳梗塞を起こした父の年齢に入っているからでもある。生きている以上、人間だれしも死は避けられないからである。生きているか死んでいるかのいずれかしか存在しないのである。

(え)「バレル研磨」

さて、話はますます昔に遡る。今度は、山梨県の宝石研磨業者がどのようにして水晶や宝石を研磨したかという話である。

一般に「バレル研磨」というものがいまでは一般的である。いまインターネットですぐに見つかるものとしてはこんなものがある。
回転式バレル研磨機
e0171614_148427.jpg

バレル研磨は当社にお任せください!!
e0171614_14102951.gif

(これらのメーカーが発明したわけではない!)

原理は非常に単純である。ローリング・ストーンである。川の石は転がって丸くなる。これである。
バレル研磨

e0171614_14134632.gif

バレル容器に工作物、メディア、コンパウンド、水を入れ、バレルに回転運動や振動を与えて研磨する加工法。回転形バレル、振動形バレル、遠心流動形バレルなどがある。

川の石は上流ではトゲトゲ、ごつごつしている。原石というものはそういうものである。それが下流の石は見事にエッジがとれて丸くなっている。

はたしてこれはどうしてか?

ということで、山梨県の研磨業者たちが目をつけた。山梨県には笛吹川や荒川という大きな川がある。そういう川の石をみて気がついたと言われている。川の石がどのようにして磨かれるのかを真似たのである。

要するに、川の水には大中小さまざまな砂利がある。そうしたものが水に混じっている。こういうものが研磨剤になって、大きな石の表面を削り取る。また上から下に転がり落ちるたびに丸くなる。

工場では川を作れないから、川の代わりが必要である。

そこで考え出されたのが、樽(たる、バレル)である。樽の中に研磨剤と水と磨きたい石の原石を入れる。それをコンベアーの上で回転させる。すると、だんだん中の原石の表面がピカピカに磨かれていく。

こういう原理である。

実は、この方法もまた我が家が宝石研磨業をやっていたころ、県の工業技術試験所のスタッフと共同研究して誕生したものである。したがって、公には山梨県の工業技術研究所で誕生したということになっている。(だから、井口家で特許を取れなかった。そのおかげで、この技術が県外や海外に流出しても賠償を取れなかったのである。山梨県県庁関係者というのは産業を育成するというよりは産業を衰退させることばかりしてきたのである。)

これが1960年代のことである。この研磨剤に前述の六価クロムを使っていたのである。

磨きたいもの(宝石)の大きさや形状に合わせて、研磨剤となる粒子や粉を組み合わせる。この方法によって、それまでは凸凹のある表面をもつ宝石の表面を研磨することは不可能だったのだが、それが自動的にできるようになった。

その結果、甲府の宝石商はながらく産業廃棄物としてしか使い道のなかった、さざれ石(端っこや切れ端のこと、パンの耳にあたる、不要なもの)を捨てていたのが、そういうものを全部根こそぎ研磨することができるようになったのである。
水晶のさざれ
e0171614_14464148.jpg

(昔はさざれをこういうふうにピカピカに磨くことができなかったのである。最初は一個一個を丁寧に手で磨いたのである。それがバレル研磨で一気に全部磨けるようになったのである。山梨県宝飾研磨業者や技術試験所職員の先人に感謝しよう。)


まさに宝石研磨業の革命を担ったものが、この「バレル研磨」という手法だったのである。

私がちょうど小学生の頃、だから、1967年頃にこれが甲府市内の研磨業者に普及しだしたのである。そして、私の祖父や叔父たちが、これをブラジルや韓国など世界に流布していったのである。

こうして、いまでは「バレル研磨」という立派でご大層な名前まで付き、解説サイトまでできているという時代になったというわけである。

これまた「読み人知らずの詩」のようなものである。

我が家はこのバレル研磨機が数十台並んだ工場を持っていた。ちょうど我が家が青葉町に引っ越した頃のことである。このバレル研磨機は最初は丸いバレル(=円柱バレル)を使っていたが、大きなものになると、それが六角柱のバレルになった。

ある時、工場の隣にあった我が家のテラスで野球をしているとたまにボールが工場の屋根に乗る。そこで、梯子を橋のようにして、忍者のように向こう側に飛び移る。そして、ボールを拾ってからまた梯子の橋を渡って戻り、梯子をはずす。そんなことをしたものである。

そんなある日、私の弟が私の真似をして工場の屋根に乗ったのはいいが、屋根を突き破って落っこちた。そして、下でガンガン回っているバレル研磨機の上に落ちたのである。幸い、指を裂傷しただけですんだようだが、命を落とすところだった。

それほど回転中のバレル研磨機は危険なものでもある。

それが1970年代の中頃のことである。




(つづく)



e0171614_11282166.gif

[PR]

  by kikidoblog | 2013-11-05 14:29 | ファミリービジネス

<< ファミリービジネス5:「回転ろ... ファミリービジネス3:宝石企業... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE