ファミリービジネス8:「引き割り技術」と「ダイヤモンドカッター」

(つづき)

さらに話は遡る。


(き)原石の「引き割り技術」の確立

さて、水晶の原石やめのうの原石が恐竜の卵のような大きな岩石であることは理解できただろう。こんなものである。
めのう原石
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この写真の原石は半分に真っ二つに割れて、その表面が綺麗に磨かれている。

そもそも、固い岩石をどうやって割るのか?

石を投げて落とし、かち割るのだろうか?

もしそんなふうにして割れば、岩石はバラバラになり、売り物にはならない。売り物になるには、綺麗に真っ二つに割れていなければならないのである。

そこで甲州の宝石加工業者が考えだしたものが、「引き割り」という方法である。

これは、大きな固い鋼鉄製ののこぎりを両側から二人で引きながら、そこに水を流し込み、磨き粉となる砂といっしょにギーコギーコとやって、徐々に切っていったのである。

しかしながら、私の記憶では、材木を二人で切るという時
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のようなノコギリではなく、もっと糸ノコギリ
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の大型のようなものだったと思う。この両側にハンドルがあって、両側から引っ張ることができるもの。そして、歯はノコギリの歯のようなギザギザのあるものではなく、平たい鋼鉄製のものだったと思う。

樹木であれば、ノコギリの歯のようなギザギザのあるものでもいいが、固い岩石相手では、そういうものは不可能。だから、平板状の鋼鉄製の金属歯であった。我が家のどこかにそういうものが残っていたのを見せられた記憶がある。

昔の甲府の宝石加工業者はそういう道具を使って、原石を引き割りしていたのである。

昔はダイヤモンドカッターなど存在しなかった。だから、鋼鉄製の金属の歯で、研磨剤と水と一緒にこすりつけて往復運動をしながら、せっせと石を切ったのである。そして、その歯の上に重しをおいて圧力を増したのである。
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しかし、この方法では、岩石を半分に切るのにはいいが、それをさらに狭い円柱状に何枚も切断するには不便である。時間がかかりすぎる。しかし、大昔の人はそうやってせっせと切断していたらしい。

私の祖父の時代にこれを自動化して、一気に何枚にも切る方法の開発が進められたのである。そして、ついに「引き割りの自動化」が実現した。これによって、めのうの原石を何十枚も一気に切断できるようになったのである。

それが、甲府の宝石加工業者のいうところの「引き割り技術」というものであった。

つまり、糸ノコギリのような構造のものを何枚も平行に並べたものを作り、その柄の部分をモーターの回転部につなぐと、モーターが回転するたびに、ノコギリ部分が往復運動する。そういうものを岩石を固定してその上から引き割るのである。その時に水と研磨剤を常に流しこむ。

この現物は私が子供の頃に見たことがあったが、いまもどこかで使われているかどうかは知らない。

いずれにせよ、この我が家の祖父の時代に誕生した引き割りの技術は当時の世界最先端を行ったものである。これは、人工ダイヤを使った「ダイヤモンドカッター」
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が出てくるまで使われていたのである。

その後はダイヤモンドカッターで引き割りをする時代へと変化したのである。雰囲気を伝えるものとしては、たとえば、こんなものである。
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富士山溶岩ボールができるまでより

我が家に初めてダイヤモンドカッターが来た日のことはちょっと覚えている。こんな感じの小型のものだった。
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しかしながら、これで実際に原石が簡単に切れるのを見てみんな興奮したものである。

さて、このダイヤモンドカッターの歯についているダイヤモンドはいわゆる「人工ダイヤ」のさざれ石である。そういうものを歯の表面に接着して、それでこすって相手を切断する。ダイヤを切る場合もやはりダイヤである。

私が阪大の基礎工学部に入学した頃、阪大基礎工には超高圧研究室というものがあった。そこには、
「ダイヤモンドアンビル」
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http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2009/091210/
という装置を持つ巨大な超高圧実験装置が存在した。

これは
万力
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の二枚の歯の代わりにブリリアンカットのダイヤモンドを使って、それを両側からプレスしてダイヤモンドの間に物質を挟んで一気に押し潰すという、超巨大万力のような装置である。

当時の阪大には世界最大級のこの高圧実験装置があり、人工ダイヤを作りつつあった。間に黒鉛を入れてダイヤモンドアンビルで潰すと、無色透明なダイヤモンドがたくさんできる。こうやって初めて人工ダイヤが誕生したのである。

これをどんどん使える時代になってはじめて、それを使ったダイヤモンドカッターが誕生したのである。


(つづく)



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  by kikidoblog | 2013-11-06 16:35 | ファミリービジネス

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