「ゾウの時間-ネズミの時間―サイズの生物学」:これは必読の名著ですナ!

みなさん、こんにちは。

日本(や世界)の、セレブや指導層(とそう呼ばれる事をを願っている人)や政治家という人種のことを研究しているとさすがに連中の支離滅裂な、精神分裂的行動が目に余って来て、あまりにつまらないので、今回は全く別の話題をメモしておこう。以下の本の話である。

ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学
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これは掛け値なしに名著の中の名著である。実に面白い本である。これがいまや中古ではたったの「1円」の価値しかない。

この本の書評はもうどこかに出ていただろうし、そんなことをする義理人情もないから、ここでは行わないが、この本の中に登場してくるいくつかの事実や法則をここでメモしておこうと思う。

まずこの本の主題である。この本のメインテーマは生物にある。それも「生物学におけるスケール変換の法則」にある。不思議な事に、生物は実に見事な「スケールの法則」に従っているのである。これを一冊にまとめて紹介したのがこの本である。

では、どんなことか?

物理では「スケール変換」(一般にはscalingないしはscale transformation)とは、ものの長さや重さなどの尺度を変えたらどうなるか? という実に初歩的な話である。だから、微積分もフーリエ変換も何も出て来ない。初等数学の範囲で理解できる内容である。

たとえば、円柱状の物質の尺度を100倍すると、体積は100×100×100=(100)^3=100万倍になる。一方、断面積は100×100=(100)^2=1万倍になる。ところが、柱状物質の強度は、支える重量に耐えるものは断面積しかないから、強度は一般に断面積÷重量、すなわち断面積÷体積となる。そしてこの場合ではこれは1万÷100万となり、1/100の強度に低下してしまう。だから、あまりに大きいものはそれ自身で立つ事が出来ず、生物においては身体の大きさには限界が出る。

同様に、身体からエネルギーは体表面に比例して失われる。一方身体の内部からエネルギーは生まれるからこれは体積に比例する。だから熱の散逸は、体表面÷体積の能率を持つだろう。したがって、身体が100倍の大きさになれば、その能率は1/100になり、大きな人ほど身体に熱が溜まりやすくなる。また、身体の酸素消費量や代謝は体表面積に比例するから、代謝は体重の2/3乗に比例するはずである。

とまあ、こういうようなお話のスタイルをスケーリングというのである。

もちろん、この考え方は非常に古く、太古から賢人は知っていた。もちろん、ファインマンも知っていた。私も学生時代に学んで知っていた。多くの物理学者もすぐ理解できる。なぜなら、これはスケーリング理論の帰結だからである。上の法則は、生物学では「ベルグマンの規則」と呼ばれている。

われわれ理論物理学者や一般の物理学者の実に「頭が悪い」、というか「頭が固い」ところは、こういうふうに物事を理論的に考えて非常につじつまが合い、結構すっきり理解できると、そのままにしてしまうというところなのである。要するに、「自分の頭で考えて理屈に合うと、それで本当に分かった気になってしまう」のである。私も「なるほど、それで合点が行く」と思って以来何もして来なかった。日本の教育制度の一番の弊害とは実はこういう輩を秀才、これが異常に早くできるものを天才などと誤解して考えるようになったことである。

ところが、世界には実に変わった人々がいる。こういう人々は、「人が分かり切ったと思っていることをわざわざ実験で試してみる」のである。こういう時、たいていの人は「何でわざわざ分かり切った事を実験し直すんだ」というようなことを言い出すのである。一見、頭がいい人ほどその傾向が強い。自分で頭がいいと思っている人ほどそういうたわけたことを言い出すのである。

私もかつて理化学研究所で、当時すでに多くの研究者がスーパーコンピュータで研究している「タンパク質の折れたたみ問題」を、玩具店で市販されているルービックのマジックスネークで自分の手を使って研究するからお金をくれといったら、当時の理事長だった有馬朗人さんに「なんでそんなものにお金がいるんだ」と言われたことを思いだす。まったくそれと同じことなのである。かならずこういうことを言われるはずだヨ。

はたして、実際にやってみた人はどんな結果を出したのか?「ベルグマンの規則」の理論通りの結果だったのか? その結果はじつに驚くべきものであった。

実際には、代謝量を測定すると、2/3乗則ではなく、3/4乗則になったのである。つまり、代謝は重量の3/4乗(重量^3/4)であったのである。

こういうことからさまざまな生物の性質をスケール則にしてみると、生物の活動には、細胞周期とか、寿命とか、呼吸周期とか、心拍周期とかさまざまなものがあるが、そのどれもが生物間の大きさを比べると、実に見事な法則:「時間は体重の1/4乗に比例する」ということが発見されたというのである。

つまり、ゾウの時間はネズミの時間と比べると、(ゾウの体重/ネズミの体重)の1/4乗倍だけ長くなるのである。

じゃあ、生物現象のほとんどすべての時間がこの法則に従っているのだから、別々の2つの時間の比は一定になるはずである。例えば、寿命を心拍数で割れば、それは一定、つまり生物に依らない一定の数になるはずである。

そこで生物学者が調べると、なんと我々哺乳類ではどんな動物も一生の内に心臓は20億回打つ、ということがわかったというのである。こういう学問を「サイズの生物学」というらしい。

さて、この本の中に生物学で一般に知られているらしい、いくつかの規則(上のベルグマンの規則もその1つ)が紹介されている。それらをメモしておくと、

「コープの規則」(サイズと進化の法則):「同じ系統の中では、大きなサイズの動物は、進化の過程でより遅れて出現する。

「島の規則」(適応の法則):「島に隔離されると、大きなサイズの動物は小さくなり、小さなサイズの動物は大きくなる。

その本の著者の本川氏によれば、島の規則はおおよそ人間にも成り立つという。大陸の人はでっかい人からすごく小さい人までいるが、島国である日本にはあまり大きな人もいない代わりにあまり小さい人もいない。(これで、私も分かったのサ。四国徳島には、百姓や漁師が大きな顔している理由がネ。)

私の個人的目標の1つは、こういう法則の理論体型を作り、理論的に証明する事である。いまのところ、先の1/4乗則はまだだれも証明していないらしいゾ!
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  by Kikidoblog | 2010-10-06 12:45 | アイデア・雑多

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