人類の「Y染色体」ハプログループ分布と「シッチンの人類創世説」に矛盾があるか?
さて、国内外の政治経済だけを見ていると暗澹たる気分になる。そこで、今回は、これまでとは全く違った話題をここにもメモしておこう。それは、人類の「Y染色体」の分布の研究成果についてである。これは「人類の進化」というか、「人類のルーツ」を辿る、遺伝子レベルの科学研究である。
これまでのこういう研究には2種類ある。1つは、ミトコンドリア遺伝子を調べるもの。2つめが、男性の性染色体であるY染色体を調べるもの。前者は、母系遺伝のため、母親のルーツを辿る。後者は、父系遺伝のため、父親のルーツを辿る。
(DNA調査ポイントの青写真)
この手の研究の最初は、ミトコンドリア遺伝子の研究が主流で、我々の母親の祖先の祖先がどこから来たかという問いの答えとして、「我々の先祖の母親は、東アフリカからやってきた」という、非常に有名な話に繋がった。
比較的最近になって、遺伝子解析技術がかなり高度に進歩したために、ミトコンドリア遺伝子よりはるかに複雑で大きな遺伝子である、Y染色体
全体の解析ができるようになったらしい。Y染色体には、大きさの割には意味のある遺伝子の数が極端に少ないことが知られている。
そんなわけで、父方の系譜を辿るにはもってこいの遺伝子となり、かなり研究されて来たようである。そして、昨今では、かなり詳細な遺伝子のグループ分けが行われるようになったのである。それゆえ、すでに非常にたくさんのそうしたサイトがあるので、ここではいちいち詳細はメモしない。
私が、どういう観点からこの手の研究に興味を持っているか、と言えば、それは、例のゼカリア・シッチン博士の「ニビルの神々(シュメールの神々)による人類創造説」の真偽を確かめたいからである。もちろん、普通の科学者たちは、鼻からシッチン説など無視しているわけだから、そういう観点で研究しているものはいない。つまり、言い換えれば、この手の研究には、「偏見が入っていない」ということである。これこそ、「2重盲研法」として最適のデータである。
これで、もしこの研究の結果とシッチン博士の説に明らかなる食い違いが見つかれば、いくら興味深い言説であったとしても、残念ながら、シュメールの神々の人類創世説はお陀仏ということになるからである。
さて、そこで、Y遺伝子のハプロタイプ(=対立遺伝子の組み合わせ)というものには、どんなものがあるかというと、以下のようなものである。
Y染色体の世界分布
●Y染色体の系統分類
Y染色体は、大きく分けてAからRまでの18系統に分けられ、幹→枝の分岐から以下の5つのグループに分けられます。 〈 〉は分岐年代。
・A系統 :アフリカに固有〈4.28万年前〉
・B系統 :アフリカに固有〈3.68万年前〉
・C系統 :出アフリカ第1グループ〈2.75万年前〉
・D-E系統 :出アフリカ第2グループ〈3.82万年前〉
・F-R系統 :出アフリカ第3グループ〈5.30万年前〉
これを図示すれば、だいたいこんな感じらしい。
(DNA調査ポイントの青写真より)
これは、右へ行くほど新しい、つまり、最近に分かれたということを示している。一番左のA、B系統(黒人種型)がアフリカ東南部で出発のグループであり、右側のP、Q、Rほど西洋人型(白人種型)ということになる。
さて、これらのハプロタイプ名を踏まえて、以下の図が、この世界のY染色体分布地図である。これすなわち、父方の先祖がどのように分布しているかということを示す。つまり、言い換えれば、人種の基本分布である。
(Y染色体の世界分布)
これは本当に面白いデータである。
(あ)まず、西洋白人(コーカソイド)に主流の遺伝子には、大別して4つある。この図では、
赤色= R1b、黄色= R1a、ピンク= I、紫色= N
である。
この解釈は、さまざまなものがあるようだが、ここでは私が勝手に自己流に解釈すると、以下のような感じだろう。
おそらく、黄色は、「金髪碧眼」のコーカソイド種を代表すると見て良いだろう。赤色は、「黒髪のラテン系」のコーカソイド種を表すと見て良さそうである。それに、ピンクのメソポタミヤ地方にも分布しているように見えるコーカソイドの遺伝子、それゆえおそらく、「アッシリア・バビロニア」ルーツにみえる遺伝子グループ。ここでは「バビロン系」と呼んでおこう。紫は、北方ルーツのアジア系の遺伝子のように見える。これは「北方系」のモンゴロイド種だろう。
西洋人は、基本的にこの4つの父系を持っているようである。しかし、もう一つ、欧州から北アフリカからさらに中東に分布する、水色=E3bもある。おそらく、これは、いわゆる「セミ(ユダヤ)系」ルーツの遺伝子なのだろう。
この欧州の分布だけを調べたものが以下のものである。
(これでは、赤色、黄色は共通だが、他のものは色がずれているのでちょっと分かりにくい。ピンクが緑青色、水色がオレンジ色になっている。)


(い)次に大変興味深いのは、P、Q、RのQの分布である。Qはアメリカ先住民、つまりアメリカン・インディアンの先祖である。見かけでは、非常にアジア人型であるのに、遺伝的には西洋白人に近い父を持つというのである。特に、南アメリカは顕著である。これから、明らかに南アメリカの純粋Q種とアジア伝来の肌色=C種が北アメリカで交雑したように見えるというところである。このQを「インカ」型と呼ぶことにする。
(う)日本については、日本人による研究がたくさんあるようである。詳しいのはそういうものを見てもらい、ここでは、上の図にある特徴を述べると、日本人は、
青色= O、クリーム色= D、紫色= N、肌色= C
の4種類しかない。
青色= O=「弥生系」。肌色= C =「ポリネシア系」=「沖縄縄文系」、紫色= N =「北方アジア系」=「アイヌ系」、そしてクリーム色= D =「大和系」というところだろう。青と肌色の区別はむずかしい。一応、これがもっとも自然な感じがする。
意外なのは、オーストラリア先住民のアボリジニとアイヌが同根ではないかということは知られていたが、この種族が北方アジアから北アメリカにも繋がっていたというところである。実に興味深い。
その他の地域などの分析は自分でやってもらうとして、私が知りたい点は、はたしてこの分布とゼカリア・シッチン博士の人類創世説に明白な矛盾点があるか?ということである。
結論からいうと、驚くべきことに、全く矛盾がないのである。むしろ、この結果はシッチン説を裏付けるようにみえる。そればかりか、なぜこういう分布になったのかすら、ゼカリア・シッチン説は提供するということである。
これについては、次回。
参考:
英語
Y chromosome
Y-chromosomal Aaron
日本語
DNA調査ポイントの青写真
研究ノート12-4
Y染色体の世界分布
by Kikidoblog | 2011-03-10 13:42 | シッチン&ニビル