プルトニウムは極悪非道:「三十六計逃げるに如かず」
放射性物質の体内への取り込みを除去する方法は、一般的によく知られているのが、ヨウ素剤の服用であった(それと、セシウム剤)。この原理をもう一度考え直すことから、ストロンチウム90はカルシウム、セシウム137はカリウムが、ヨウ素131に対するヨウ素の働きをして、体内吸収をブロックするのではないか、ということを前回メモしておいた。これをまとめると、
ヨウ素131(I131) ⇄ ヨウ素(I)
セシウム137(Cs137) ⇄ カリウム(K)
ストロンチウム90(Sr90) ⇄ カルシウム(Ca)
では、もっとも危険な放射性物質プルトニウム239
は、どうやればいいのだろうか?
私が調べた範囲ではこれを除去する方策は今のところ知られていないようである。だから、出来る限りプルトニウムにはさらされないようにすべきである。
しかしながら、もしプルトニウム239にさらされてしまったらどうすればいいか?
私の個人的考えでは、セシウム137、ストロンチウム90の場合と同じような考え方が通用するとみている。つまり、プルトニウム239が体内のどの物質の代わりをして取り込まれるのかを見るということである。
まず、
プルトニウム(Pu)
を見ると、プルトニウムはたくさんの価数を持つ物質であることが書かれている。
水溶液中では5種類のイオン価数を有する:
III価……Pu^3+(青紫色)
IV価……Pu^4+(黄褐色)
VI価……PuO2^2+。(ピンク、オレンジ色)
V価……PuO^2+。(ピンク色と考えられている。V価のイオンは溶液中では不安定で、Pu^4+ と PuO^2+ に不均化する。さらにその Pu^4+ は PuO^2+ を PuO2^2+ に酸化し、自身は Pu3+ になる。こうしてプルトニウムの水溶液は時間が経過すると Pu^3+ と PuO2^2+ の混合物に変化する傾向がある。)
VII価……PuO5^2-(暗赤色)VII価のイオンはまれであり極端に酸化性雰囲気下でのみ生成する。
これを見て分かることは、
(周期律表)
で言えば、プルトニウムの化学的性質に一番似ているのは、炭素(C)やケイ素(Si)などの4価(ボンドが4本)の原子ということになる。そこで、大気中では、二酸化炭素(CO2)、二酸化ケイ素(SiO2)のように、二酸化プロトニウム(PuO2)が一番多いということになる。
化合物
プルトニウムは酸素と容易に反応し、PuO、PuO2 となる。また、その中間の酸化物も生成する。また、ハロゲンとも反応し、PuX3 の形の化合物を作る。PuF4 および PuF6 も見られる。PuOCl、PuOBr および PuOI のようなオキシハライドも確認されている。
炭素と反応して PuC、窒素と反応して PuN、またケイ素と反応して PuSi2 を形成する。
プルトニウムは他のアクチノイド元素と同様、二酸化プルトニウム (PuO2) を形成するが、 自然環境中では炭酸など酸素を含む錯イオン(OH^-、NO^2-、NO^3- および SO42-)と電荷のある錯体を作る。 こうしてできた錯体は土との親和性が低く容易に移動する:
PuO2(CO3)^2-
PuO2(CO3)2^4-
PuO2(CO3)3^6-
強い硝酸酸性溶液を中和して作った PuO2 は、錯体にならない PuO2 重合体を生成しやすい。 プルトニウムはまた価数が3、4、5、6価の間で変化しやすい。 ある溶液のなかでこれら全ての価数で平衡して存在することも珍しくない。
しかしながら、炭素やケイ素には放射性がないが、プルトニウムには原子核が非常に大きく、強い放射能を帯びている、ということである。ここにすべての問題がある。 そして、二酸化プルトニウムは、極めて水に溶けにくいらしい。
これは非常に水に溶けにくい[4]。100万kLの純水にプルトニウム原子1個が溶ける程度であるといわれている。
さて、プルトニウムがどのように体内に取り込まれると考えられているかというと、こうある。
毒性と人体への摂取経路
京都大学原子炉実験所 小出裕章によれば、プルトニウムは、「人類が初めて作り出した放射性核種」であり、「かつて人類が遭遇した物質のうちでも最高の毒性」を持つとされる[12]。その理由は、プルトニウムがアルファ(α)線を放出すること、比放射能が高いこと、体内での代謝挙動にあるとされる[13]。
プルトニウムは人体には全く不必要な元素である。毒性の強い元素の中には必須ミネラルで微量は人体にとっても必要なものもあるが(例:ヒ素、セレン)、プルトニウムは必須ミネラルでさえない。
体内摂取の経路と排出
プルトニウムを嚥下し消化管に入った場合、そのおよそ0.05%程度が吸収され、残りは排泄される[14]。吸収されたプルトニウムは、骨と肝臓にほぼ半々の割合で蓄積される。皮膚との接触については、傷が無い限り吸収されない。
最も重要な取り込み経路は、空気中に粒子状になったプルトニウムの吸入である。気道から吸入された微粒子は、大部分が気道の粘液によって食道へ送り出されるが、残り(4分の1程度)が肺に沈着する。沈着した粒子は肺に留まるか、胸のリンパ節に取り込まれるか、あるいは血管を経由して骨と肝臓に沈着する[15]。
プルトニウムは一度吸収されると体外へ排出されにくいのが特徴である。生物学的半減期はウランやラジウムと比べても非常に長く、骨と肝臓でそれぞれ20年と50年である。吸収線量あたりの有害さは核種や同位体によらずラジウム等と同程度であるが、プルトニウムの扱いに特に注意が必要なのは、まさに排出されにくいという特徴によるものである。
というわけで、
空気中では、二酸化炭素のような形で存在し、水に溶けにくい。しかし水中では、3価から7価の5種類に変貌する。しかも強い放射能を持ち、寿命が極めつけに長い。というのが、プルトニウムという極悪非道の物質のようである。
では、どうやって除去するか?
プルトニウム239の場合は、空中のものであれば、水に溶けにくいから、水を含んだマスクが有効かもしれない。ゴミとしてホコリとして除去するのである。イオン交換膜などのフィルターのついた空気清浄機なども有効かもしれない。とにかく吸い込まないようにする他はない。マスクはそれから被爆しないように鉛のカンに入れる。
水の中のものは、プルトニウムはほとんどが2価の二酸化プルトニウムになっているようだから、イオン交換膜を使った浄水器が有効かもしれない。フィルターはすぐに鉛カンに入れる。
体内への吸収を避けるには、鉄分を取ることでヨウ素131に対するヨウ素のような役割を果たすのではないかという気がする。しかし、今の段階では、これはまったく確証はない。
まあ、そんなわけで、
プルトニウムについては、物理的に出来る限り遠くへ逃げる。吸い込まない。除去する。もし吸い込んだら、呼吸器系を洗い流す。鉄分などのミネラルをとる。
こんな対処療法しかなさそうである。
「三十六計逃げるに如かず」
という昔の諺がこれほど適した物質もないということですナ。ご幸運を祈る!
by Kikidoblog | 2011-03-26 10:35 | 放射能防御除去