いずれ「ヘレニズム精神」と「ゲルマンの技術」が東アジアで花開く
ヒトラーの予言者としての癖は、普通の話の中に時々、未来の話がふと盛り込まれるというようなものであったという。聴衆の面前の大講演の中で、時として「未来はこうなる」というような話を盛り込んだのである。
そんな話のいくつかには以下のようなものがあったという。
20世紀末、毒の雨がヨーロッパに降る。わたしの故郷(=オーストリア・南ドイツ)の森もそれで枯れ果てる。
その後ほどなく、ヨーロッパは血と悲嘆の中に沈む。人間も自然も腐る。アメリカも天変地異と経済破局と麻薬の中に沈む。
−−第二次世界大戦直前、ナチ将校団への演説
21世紀のいつか、地球を保っている火と水のバランスが大きく破れる。熱が氷の上に、星が海と山に降る。溶ける氷河が欧米の一部を呑みこんでいく。
その前に北欧の海が腐るだろう。そこに住む生物たちは腐って死ぬ。そうなったら、それがヨーロッパ破滅の前触れなのだ。よくおぼえておくがいい。
−−第二次世界大戦末、ナチ将校団への演説
こういった戦前戦中のヒトラー予言をつぶさに調べるうちに、五島勉はヒトラー予言の正確さに気付くようになったというのである。「毒の雨」=「酸性雨」、「地球を保っている火と水のバランスが大きく破れる」=「地球温暖化」など、1980年代当時でもその状況を見比べることで、ヒトラー予言の正確さに目を見張らされたということらしい。しかし、1980年代当時ではまだ「北欧の海が腐る」ことはなかった。
ところが、21世紀の今の我々は知っている。ひょっとしたらこれから「北欧の海が腐る」かも知れないということを。なぜなら、メキシコ湾の海底油田の事故で未だに石油がずっと大西洋を汚染しているからである。ちょうど今福島原発から出る放射能が世界中の空気を汚染し、放射能汚染水が太平洋を汚染しつつあるのと同様である。したがって、「北欧の海が腐る」=「メキシコ湾の石油田事故による海洋汚染」である可能性が高い。
さらに「我が闘争」には、こんな一節もあるという。
(わたしが『わが闘争』を書いてから)数十年後、東アジアのすべての国々は、その基礎がわれわれと同じヘレニズム精神とゲルマンの技術であるような文化を、自分たち固有のものだと呼ぶようになるだろう。
角川文庫「我が闘争」上巻、413ページ
この何気ない一節に五島勉は興味を覚えたのである。なぜなら、まず「当時はまだ東アジアというものがなかった」からである。いわゆる「東アジア」が誕生するのは、第二次世界大戦後アジア諸国が独立して後のことだからである。韓国などはさらに朝鮮戦争を経て後のことである。
さらに五島勉は、この文節に出て来る「ヘレニズム精神」と「ゲルマンの技術」とは何を指しているのか?ということを知るための調査を行った。
その結果、「ヘレニズム精神」とはいわゆる「近代オリンピック精神」のことだったというのである。要するに、ヒトラーが言った意味は
将来東アジアの国々もオリンピックを開催できるようになるまで発展する
という意味だったということである。実際、日本(東京オリンピック、1964年)、
韓国(ソウルオリンピック、1988年)、
中国(北京オリンピック、2008年)
と近代オリンピックを開催するまでになった。
この五島勉の「1999年以後」は1988年10月出版だから、その当時、東京オリンピックは過去のこと、そしてソウルオリンピックが終わって数ヶ月後のことである。その当時、北京オリンピックのことはまだ明確ではなかったはずである。五島勉ですらそんな状況だったのだが、ヒトラーは第二次世界大戦中にそう予言していたというのである。
次に「ゲルマンの技術」とは何か? 五島勉はそれを知るために沢山のドイツ人に聞いて回ったのだという。その結果として分かったことは、「ゲルマンの技術」=「自動車技術」だったというのである。当時、飛行機はアメリカのライト兄弟の発明、戦車はイギリスのキャラピラーの発明、というように、多くは英米仏の発明が多い。
しかしながら、自動車、それも近代的な自動車の発明は、1886年のマンハイムのカール・ベンツとシュツットガルツのゴットリープ・ダイムラーが独立の発明したというのである。そこからダイムラー・ベンツの名とともにドイツの自動車産業と高速道路(アウトバーン)網文明が始まったというのである。
確かにヒトラー総統のイメージはかならずベンツに乗ってやってくるというものである。
この意味が「ゲルマンの技術」というものであったというのである。したがって、ヒトラーは、その「ゲルマンの技術」=「自動車技術」を東アジアの国々の人々もあたかも自分のもののように考える時期が来る、と予言したということである。
これまた戦後の東アジアを見事に予言していると言えるだろう。まず日本がトヨタ、本田、スズキ、日産、マツダ、スバル、などなどの自動車会社を生み出した。韓国ではヒュンダイなど。中国も今では自動車企業が花盛り。インドでは空気自動車まで出てくる時代である。
こうして五島勉はますますヒトラー予言の正しさを信じるようになったというのである。
by Kikidoblog | 2011-06-09 12:01 | ヒットラー予言