ヒトラーの「指名予言」の恐怖
■■■第6章:地下官邸でのヒトラーの「指名予言」
第二次世界大戦の進展とともに忙しくなったヒトラーは、なかなか予言能力を発揮できなくなった。というのも、自分の霊感や超能力を使って全軍を指揮していた為に、1人で全部を取り仕切ることがもはや出来ない段階に達していたからだと言う。まさに「独裁者」となったわけである。この時期は、精神的にも荒れたようである。
ヒトラーはしばらく予言を口にしなくなる。
そんな悠長な状態ではなくなったからだという。
ハンス・フランクと対話した1年後の1939年8月31日、雨の降り続く冷夏の深夜、ヒトラーは突然飛び起きて
「今だ! 私は命じられた! 進め! ポーランドヘ!」
と甲高い声で叫び、全軍にポーランドへの侵攻を指令した。
ドイツ軍によるポーランド侵攻 (1939年)
これで第二次世界大戦の幕が切って落とされた。
あとは北欧やオランダヘの急侵攻、宿敵フランスとの短期決戦、英国へのV1号V2号攻撃、米ソ両大国の参戦、さらに日本の真珠湾攻撃と、わずか1年ほどのあいだに、世界は血と硝煙の中で、ただ目まぐるしく動いた。しかもそれは、マジノ線突破から真珠湾奇襲、ノルマンディー上陸まで、ヒトラーが山荘で予言したのとほとんど違わない展開をみせ、あらためて側近たちを震え上がらせた。
だが当人は、それを自慢している暇もなかった。強力な独裁者であることが裏目に出て、いっさいの指揮の責任が一身に集まり、彼は毎日、声を枯らして部下たちに作戦を命令し続けねばならなかった。
「今日はV2号を50基出せ!」、「ノルマンディーに戦車200台だ!」、「米軍のど真ん中にカルル砲(天才カルル博士が作った口径55センチの巨砲)をぶっ放せ!」、「ロンメル(北アフリカ戦線のドイツ軍の名将)にプラチナ十字章をやっておけ、しかし奴から目を離すな」……。
これでは遠い未来を瞑想するなど思いもよらない。しかもインスピレーションの源泉ももう絶たれていた。ヒトラーは開戦と同時にオーベルザルツベルグの山荘を離れ、総指揮のため、ベルリンの総統本営に移ってきていたからだ。
ベルリンの総統官邸
(この建物の地下壕は、大規模な設備を有していた防空施設で、ベルリンで一番安全な場所であると言っても過言ではなかった。長期戦に備えて食料貯蔵庫や電話交換室、配電室、毒ガス攻撃に対応するための空調室も兼ね備えていた。)
そこには、彼の心深く何かをふき込んだ、雪に輝くドイツアルプスの姿はなかった。洞窟の奥の未来都市もなかった。形ばかり大げさに飾りつけた広い会議室と、ごっつい将軍たちの顔があるだけだった。開戦後、勝利が続いているうちはそれでもよかったが、米ソが参戦し、ナチスが東西から押されぎみになってくると、ヒトラーは歯を剥き出して将軍たちに当たった。
「ハゲタカが泣いたみたいな顔しやがって、出て失せろ!」
彼はしばしばどなった。
「こんな陰気な宮殿の中できさまらの顔ばかり見てると、霊感もしぼむ。きさまらと会議するたびに、私は退化して猿に戻っていくような気がする。私がもし猿並みの人間になったら、それはきさまらのせいだぞ!」
再びアドルフ・ヒットラー(英語ではヒッラーの発音に近い)の予言能力が復活する。それはどうやら米軍のドイツ本土空襲のために、ナチス本部が地下壕に潜むようになったためらしい。
しかし、まもなく奇妙な変化が起こった。
きっかけは皮肉にも、ナチスの旗色がいっそう悪くなり、米軍機の爆撃が激化したことからだった。ベルリンの街は、家々の外側のコンクリートだけ残して、墓場の廃嘘のようになった。かろうじて生き残った市民は、防空壕や地下鉄の構内でただおびえていた。ヒトラーの総統本営も、地上の部分はガレキの山になり、地下深くもぐらねばならなくなった。これが不思議なことに、ヒトラーの予知力にふたたび火をつけたのだった。
「私は負けたモグラじゃないぞ」、そう怒りながら、いやいや地下の私室に入った彼は、翌日、目をギラギラさせて側近たちの前へ出てきた。
「ここは山荘の洞窟に似とる。おかげでひらめきが戻った。」
彼は地の底からひびくような声で言った。
「しばらく会えなかった“あいつ”ともまた会えた。“あいつ”が未来を見させてくれた。前よりもいっそう鮮明にだ。聞け諸君、これは私の未来というより諸君の未来だ!」
そして彼は、毎日の作戦会議の前後、時には途中でも立ち上がって私室に側近たちを呼びつけ、新しい霊感に照らされた未来を、しわがれた声でしゃべった。それは先の山荘予言とは、はっきり異質のもので、側近たちを名指しで呼んでは予言する薄気味悪いものだった。だからこれを、「地下官邸でのヒトラーの指名予言」と呼ぶ研究者もいる。
といっても、ナチスの敗色が濃くなってきた混乱期に語られたため、資料は山荘予言より更に少ない。側近たちが聞いて、あとで友人や戦犯裁判の検事に話したり、手記に書いたり……それを欧米の研究者が1、2行ずつまとめたものしか残っていない。それでも、それらをつないで並べると、こんな怨念のこもったような「指名予言」の数々があぶり出されてくる。
こうhして誕生したものが「ヒトラーの指名予言」と呼ばれるものであるという。
そのいくつかが「1999年以後」にはまとめられている。以下のものである。
ゲーリングとヒムラーへ……きみらは私を裏切るぞ
ヒムラー
ゲーリング
「やあヘルマン、やあハインリッヒ。ここの地下生活はどうかね。私は不愉快を通り越して快適だ。頭が前より冴えてきた。きみらのことも、前よりよくわかるようになった。きみらとゲッベルス博士(宣伝の天才は哲学博士でもあった)は、わがナチスの最高幹部だ。私の忠実な友人だ。しかしきみら2人は、私にははっきり見えているが、私の最後の日の7日前に、共謀して私を裏切るぞ──。きみらはアメリカ人と気が合うからな!」
侍医のモレル博士へ……ここには「長い壁」ができる
「モレル、きみは軍人じゃないから、なんでも話せる。軍人に話せば気力を失くすようなことでもね。……なあモレル、私の予知では、ナチスはまもなく負けるよ。負けて何もかもなくなって、ここらへんは美しい芝生になる。
しかし誰も遊びにも見物にも来ない。この近くには『長い壁』ができて、ドイツを真っ二つに裂く。そこへは今世紀の終わりまで、世界中から見物人が来るが、ここへは来ない。芝生の隅には小さな看板が立って……そう、『ここにナチスの本拠があった』と書かれるようになるだろうよ。」
愛人エバとレニへ……子どもを生まない民族は滅びる
レニ・リーフェンシュタール
エバ・ブラウン
「レニ、こんな時期にこんな所へよく来てくれた。でも、きみはここを去って、二度と戻っては来ないよ。そして、それでいい。きみは長生きして名声を得るだろう。また、死ぬまで映像の美とともにあるだろう。将来の……今世紀末から来世紀はじめの文明国では、きみのように結婚もせず、子どもも生まず、一生、男以上の働きをする女性が増えるよ。しかし、それは当然、女性の見かけの地位の向上とともに、その民族の衰亡──ひいては人類の破滅につながるワナなんだけどね。
そしてエバ、きみもここを去って二度と戻って来ないほうがいい。しかし、きみは戻って来る。それは、きみがエバだからだ。それがきみの運命で、私の運命でもある。きみは私との運命の秘儀のために戻って来るのだ。」
再びハンス・フランクへ……世界の二極化は進む
「やあハンス、私だ、ヒトラーだ。久しぶりだな。どうだ元気かね? ソ連軍はどこまで来ている? ほう、もうそんなにか。……いや大丈夫だ、まだまだ保つ。救援の戦車とロケット部隊をすぐ出すよ。きみもがんばってくれ。
ところでハンス、いつだったか山荘できみに、『私が生まれた100年後、1989年、人間が2種類に分かれる』と言ったことがあったな。金持ちや土地持ちと新しい貧民、恵まれすぎる国や恵まれすぎる人と、恵まれなさすぎる国や人、地獄の災害地と不気味なほどの楽園、間違いなく何もかも2つの極に分かれる、と。
そのあとのことを、あのときは言わなかった。漠然とわかってはいたが、まだ確信がなかったのだ。
だが、今になって、それがはっきり見えるようになった。あとでみんなにも話すつもりだが、あのとき、きみに話した続きだから、まず、きみに話そう。
それは『激化』ということだ。“2つの極”はますます進む。1989年以後、人間はごく少数の新しいタイプの支配者たちと、非常に多数の、新しいタイプの被支配者とに、ますます分かれていく。
一方は、全てを操り、従える者。他方は、知らずしらずのうちに、全てを操られ、従わされる者たち。しかも進むのはそれだけじゃない。
人間がそうなるにしたがって、地球にも宇宙にも大変動が起こるのだ。1989年以後、人類には宇宙から、かつてないカタストロフ(大破局)が近づくのだ。
若いころわたしは、『わが闘争』に、いずれ人間が大自然から復讐されると書いた。それが1989年以後の状態だ。人間が思い上がって宇宙の自然を犯すため、宇宙が人類に復讐の災厄を下すのだ。
そしてそれが人類を、想像を絶する究極の状態にみちびいていく。わたしが生まれてから150年後、21世紀に来る究極に。わたし自身もそれを霊感ではっきりと見てさえ、信じられないような究極に。
しかもハンス、その前にもうひとつの山がある。1999年か2000年に、真のハーケンクロイツの日が来るのだ。
そのときナチスは蘇る。蘇って、真のレツトバタリヨン(=英語ではラストバタリオン)を人類に送る。
つまり、”最後の部隊”だ。それが世界を支配するのだ。わかるかハンス? 私が死んだらきみがこれを伝えろ。新しい真のナチスの世界に伝えろ。きみはわからないだろうが、それはもう始まりかけているぞ。ではハンス、ごきげんよう……」
そして、戦前戦中の最後の玉音放送として、ヒトラーの最後のラジオ放送で「最終予言」が行われたというのである。実際には3、40分間の放送だったらしいが、残っているのは、次の切れ切れの7、8分間分だけしかないという。
国民諸君、同志諸君、最後まで戦い続ける諸君に敬意を表する。すでに戦況は……私はベルリンと運命をともに……しかしナチスは不滅である……たとえ米ソがいったんは勝つように見えようとも……。
そうなのだ、それは砂の上の勝利だ。彼らは世界の真の支配者ではないからだ。彼らの背後で操る者……ユダヤ……イスラエル……世界的なユダヤ国際資本……。
米ソは……おそらく1990年代ごろまで、対立と妥協を繰り返しつつ、世界を運営しようとする。しかししょせん……ヨーロッパと日本、東アジア、イスラム諸国、インド……いずれ世界は米ソの手に負えなくなる。
そのときユダヤはみずから……に乗り出す。あわれなアラブ4カ国……最終戦争。東西が激突するだろう。ユダヤはそれに勝って全世界……なぜならそれが彼らの『旧約聖書』の約束だからだ。
黙っておけば必ずそうなる。しかし、私がそうはさせない。そのための手を、私は死ぬ前に打っておく。それが最後の秘儀である。それによって人類はわれわれを受け継ぐことになる。しかも見よ、そのあと、わがナチスの栄光、ラストバタリオン……。
それが真のハーケンクロイツの日だ。カギ十字の日だ。そのときラストバタリオンが現われる。ユダヤを倒す。世界を支配する。永遠に……そしてナチスは甦る。真のヒトラーの時代が来る。
必ずだ。甦ったナチスの軍団とその強力な同盟がそのとき来る。宇宙からの復讐のカタストロフィとともに来るぞ。
それからが真の究極だ。真の終わりで真の始まり、真の淘汰、天国の地獄、21世紀のその年に、人類の驚くべき究極の姿……ではそれを明かそう。諸君、それは人類……
五島勉のこの「1999年以後」が書かれたのは1988年である。だからいわゆる「ノストラダムスの大予言」や「1999年のアルマゲドン」がまだ生きていた時代である。この時代には、いまほど「第三次世界大戦」の現実感はなかったはずである。ましてや今まさに「第二次世界大戦が自分の敗北でいままさに終わろうとしている」時にその後の第三次世界大戦のことをヒトラーは予言したのである。
はたしてアドルフ・ヒトラーは「アルバート・パイクの行動計画書」
第一次世界大戦は、ツァーリズムのロシアを破壊し、広大な地をイルミナティのエージェントの直接の管理下に置くために仕組まれることになる。そして、ロシアはイルミナティの目的を世界に促進させるための“お化け役”として利用されるだろう。のことを知っていたのだろうか?
第二次世界大戦は、『ドイツの国家主義者』と『政治的シオニスト』(パレスチナ地方にユダヤ人国家を建設しようとする人々)の間の圧倒的な意見の相違の操作の上に実現されることになる。その結果、ロシアの影響領域の拡張と、パレスチナに『イスラエル国家』の建設がなされるべきである。
第三次世界大戦は、シオニストとアラブ人とのあいだに、イルミナティ・エージェントが引き起こす、意見の相違によって起こるべきである。世界的な紛争の拡大が計画されている……
キリストの教会と無神論の破壊の後、ルシファーの宇宙的顕示により、真の光が迎えられる……」
時代的には全く違うからおそらくそれはなかったはずである。あるいは、ロスチャイルドの手下から耳打ちされただろうか? この可能性は否定できないが、おそらくそういうものは知らなかったし、どうでもよかったのだろうと思う。というのも、パイクのシナリオは、まさにヒトラーが「なぜならそれが彼らの『旧約聖書』の約束だからだ。黙っておけば必ずそうなる。」といった方の「ユダヤ人のシナリオ」だからである。ヒトラーのラストバタリオンはそれとはどうやら異なる別物だからである。
はたしてこの「ラストバタリオン」とは何ものか? これが次の大問題である。
by Kikidoblog | 2011-06-11 15:39 | ヒットラー予言