「私をフォールドイットして!」:タンパク質折れ畳み問題3Dゲーム、ゲーマーが勝利!
いやー、ついに光より速い粒子も見つかってしまったようだが、これも面白い。「科学者よりも速いゲーマーの頭脳」というものである。
科学者より速いゲーマー!?
ゲーマー、科学の難問を3週間で解明
【ワシントン=山田哲朗】10年以上にわたり科学者を悩ませてきたたんぱく質の形を、オンラインゲームの参加者がわずか3週間で解き明かした。
成果は専門誌の電子版で発表され、貢献したゲーム参加者2チームも論文に名前が載った。
このオンラインゲームは「フォールドイット(たため)」と呼ばれ、米ワシントン大の研究者が2008年に開発した。複雑に折りたたまれたたんぱく質の立体構造をパズルのように探るソフトで、参加者はパソコン画面で、たんぱく質の素材となるアミノ酸の鎖をいじり回し、効率のいいたたみ方を競い合う。
同大のデビッド・ベイカー教授らが猿のウイルスの酵素を出題したところ、世界中の参加チームが次々と改良を重ね、安定した三次元モデルを作りあげた。教授らは、このモデルを基に数日のうちに構造を確定した。(2011年9月23日18時37分 読売新聞)
この中に出て来る、フォールドイットというのはこれである。
Foldit
これからソフトを入手できる。
タンパク質の折れたたみ問題のおもちゃのモデルは、私もかつて「ツクダオリジナル」から出ていた「ルービックのマジックスネークモデル」の数学を解明することにより、いくつか論文にしている。
このモデルは、まさに子供用のパズルであるが、最初は日本国内のみの販売だったが、最近では欧米でもかなり人気が出て来ているようである。このモデルの本質は、まさに「タンパク質の折れ畳み」と同じなのである。さらには天然のタンパク質の折れ畳み問題から考えるとあまりなじみのない概念も含まれていて、一時私はこのパズルに集中したものである。
Rubik's Magic Snake Model with Chirality S = 0
Rubik's Magic Snake Model with Chirality S = 1
この他に、「正四面体」と「正八面体」だけを使って折れ畳みを考えると、フラーのオクテットトラスの螺旋版が出来るのである。
Octet Truss Spirals
これは、ライナス・ポーリング博士が提唱した「αヘリックス」の理想的モデルそのものなのである。「正四面体」–「正八面体」–……と繰り替えしていくか、「正四面体」–「正四面体」–「正八面体」–……と繰り替えしていくかで、上からみて四回対称の螺旋か、5回対称の螺旋かが決まるのである。現実のα螺旋では、これが3・8と5・1とかになっているというわけである。
さらには、「正四面体」と「正八面体」だけをつかって、DNAの2重らせんができるかどうかも一時やってみたことがあるが、要するに、こういうものを紙でたくさん作り、それをのりとテープでくっつけてDNAの糖鎖の部分や塩基の部分を作って貼付けて行くのであるが、なにやら「8回対称軸を持つDNA」が出来たのである。現実のものは10回対称だからすこし違うのだが、一時その見事な幾何学にほれぼれしたものである。しかし、学会講演かなにかでそのパーツが必要になって分解してしまったためにそれ以後二度と同じものをみることなく終わっているというわけである。
今回のニュースの「フォールドイット」はこういう実物模型ではなく、コンピュータ内の3Dゲームとしての模型である。だから、私が考えたものとはかなり違うが、私が実際に自分の手を使って考えたのと同じことをパソコン内でやったらしいというわけである。
もし興味のある人は、自分で「フォールドイット」をやってみることをお勧めする。何事も自分で実際にやってみることが大事である。そうやって行くうちに、その問題の科学的側面にも興味が出て来るだろう。そんな人には以下の解説もある。
The Science Behind Foldit
学問は情熱だ! 発見は爆発だ!
というわけですナ。
いやはや、いずれにせよ、ゲーマー恐るべし! 今や本当の頭脳や天才は大学にはいないのかもしれませんナ。
by kikidoblog | 2011-09-23 20:00 | アイデア・雑多