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「ナッシュ均衡」:ビューティフル・マインドとはこういうもの!?1

みなさん、こんにちは。

さて、今日は「ナッシュ均衡」という話題をメモしておこう。というのも、達人さんのサイトでせっかく取り上げてくれたからである。
ナッシュ均衡とゲーム理論 投稿者:Legacy of Ashesの管理人 投稿日:2012年11月15日(木)17時03分1秒 返信・引用 編集済
井口博士のところに「ナッシュ均衡」についてありました。私のような落第生には無縁の世界ですが勉強しましょう。

http://quasimoto.exblog.jp/19214616/
(以下省略)

この概念を発案した人は、
ジョン・ナッシュ
「ナッシュ均衡」:ビューティフル・マインドとはこういうもの!?1_e0171614_1161066.jpg
というアメリカの数学者である。
「ビューティフル・マインド」
の主人公になった人である。若い頃精神病と判断され、強制入院。数多くの人体実験のような治療を受けたといわれている。晩年にノーベル経済学賞受賞。このノーベル賞受賞がなければおそらく映画にはならなかったにちがいない。

さて、そのジョン・ナッシュの「ナッシュ均衡」という概念。これを数学的に厳密にやろうとするとおそらく普通の人はまったく理解できないはずである。しかしながら、この「ナッシュ均衡」の問題というのは、実に不思議で意外と普通の感覚で理解することができるものなのである。むしろ、その方が数学的にやるよりもっと本質を理解できるという代物なのである。かなり珍しい。普通は逆なのである。

そこで、もう10年以上も前になるが、その頃私が運営していた掲示板に私が書いたことをいくつか引っ張り出して、それからおおよそどんなものか理解してもらうことにしよう。

また、そこで論じられたものから2002年当時にどんな話題が議論されていたのか振り返ることもできるだろう。当時は、「大学の独立行政法人化」の是非が問われた時代であった。この頃にはすでに「毎年5兆円規模」の「科学研究費」が大学や研究所に回されるようになったのである。

ついでにいうと、当時すでに私はフリーの物理学者になって数年目であり、金銭的には「三菱財団」から助成を一回受けたのみであった。私は「独立行政法人化」には賛成であった。しかしそのためには大学院から「少数精鋭主義」でいかなくてはダメだという意見であった。だから大学院生を1/10程度にすべしという意見であった。

ところが当時国立大学の人々はおおむね「独立行政法人化」に反対していた。まあ、何かを恐れていたわけだ(実際には自分か誰かが首になる、自分の部署やある部署が廃止になるというような恐れ)。しかしそれは杞憂に終わり、平均給与は当時の2倍、軽く1000万円以上。今では大学の先生たちは電通すら「A層」と評すほどの「この世の春」を横臥し、80年代バブルさながらのリッチで威勢のいい生活を送れるようになったのである(大学教授たちの「不都合な真実」:もっと積極的に大学教授を貧乏にしよう!)。それもそのはず、企業経営者のように自分たちの給料を自分たちで決めることができる自由ができたからである。俺に感謝しとけヨ。

今回はそれをいくつか再掲しよう。以下のものである。
1400
囚人のジレンマと大学のジレンマ
KI

2002/04/12 16:46
男性 自由業 44歳 O型 徳島県

さて、ナッシュ博士のビューティフルマインドが公開されている間に
その関連である「囚人のジレンマ」というお話があるようだ。
ウィリアム・パウンドストーン「囚人のジレンマ」(青土社)を参照して欲しい。

ここで言うジレンマとは、次のようなものだ。上の本の最初には
タケシのここが変で有名になった、ゾグマンさんの出身地である
アフリカ、ベナン地方の「板挟み物語」というのがある。

妻と子を連れた男が川を渡るとき、対岸にキリンがいた。そこで
男は銃を向けてそのキリンを撃とうとした。するとキリンが言った。
撃てば妻が死ぬ。撃たねば娘が死ぬ。さて、男はジレンマにどう対処するか?

このように、どちらを選択する方も何かの損をするが、どっちが
ベターかというような板挟み状況のことをジレンマと言っているらしい。

そこで、囚人のジレンマとは、次のような話だ。これにはさまざまな
バリエーションが考えられる。

見ず知らずの2人の男が殺人容疑で逮捕された。警察の取り調べ
に対して何とも自分がやったと言わない2人に対して、警察は
それぞれの男に別々に次のように言った。

もしお前が黙秘して他の男が自分がやってないと否定したら、
お前が犯人で死刑、他の男は無罪放免だ。
もしお前もやってないと否定し、他の男もやってないと否定したとしたら、
お前たち2人とも殺人の疑いありということで無期懲役だ。
しかし、もしお前も他の男も黙秘したら、お互いに相手をかばった
ということで、両者懲役5年の処分だ。

さて、男はどうすべきか?
こういうような板挟み(ジレンマ)が囚人のジレンマというものらしい。

このジレンマには、4種類の選択枝がある。
共に黙秘、片方が黙秘、共に否定。つまり、
       

相手\自分| 黙秘     | 否定
————————————————————————
黙秘   | 黙秘、黙秘  | 黙秘、否定
     | 共に懲役5年 | 死刑、無罪
————————————————————————
否定   | 否定、黙秘  | 否定、否定
     | 無罪、死刑  | 共に無期懲役


相手\自分| 黙秘     | 否定
————————————————————————
黙秘   | 共に良い   | 自分に最良
————————————————————————
否定   | 自分に最悪  | 共に悪い


共に相手をかばって黙秘すれば、禁固5年処分で、両者に良い。
しかし、もし相手が裏切れば、自分は死刑になる可能性がある。
相手が自分をかばってくれたら自分は否定すれば無罪放免だが、
もし相手も否定すれば、無期懲役になってしまう。

自分はだんまりを決め込むか?あるいは否定するか?どっちが
良いだろうか?っていうジレンマに陥るわけだ。

ナッシュ博士の理論によれば、この場合は最悪は死刑なので、
その最悪の場合を避ける必要があり、相手の出方によらず、
自分は否定を選ぶ方が得だということになり、これがナッシュ均衡点
と呼ばれているらしい。そして、このジレンマのように相手が
自分に協力しないゲームを「非協力的ゲーム」と呼ぶようだ。
もちろん自分も相手に協力しない方がリスクが下がるわけだ。
これを「非協調戦略」と言うようだ。

ところが、死刑のような破滅的な状況でない場合、例えば、

相手\自分| 黙秘     | 否定
————————————————————————
黙秘   | 黙秘、黙秘  | 黙秘、否定
     | 共に懲役5年 | 無期懲役、無罪
————————————————————————
否定   | 否定、黙秘  | 否定、否定
     | 無罪、無期懲役| 共に懲役20年

のような場合は、最悪でも無期懲役である場合には、人間は
どちらかと言えば、協調して共に懲役5年の刑の方を選ぶようになる
らしい。これは「協調戦略」と呼ぶらしい。これに気付いたのは、
フラッドとドレッシャー両博士らしい。

つまり、物理学者の言葉で言えば、最悪の結果の程度を変数(秩序変数)
として、共に良い(協調)と共に悪い(非協調)の間で対称性が破れる
ということのようだねー!


さて、日本の大学の独立行政法人化問題の場合を考えてみよう。
そこでこれを「大学のジレンマ」と呼ぶことにしよう。
独立行政法人化に際して、文部科学省はそれぞれの大学にこう言った。
「もしあなたの大学が独立行政法人化に賛成して改革するなら、
トップ30校に選んでやろう。」

つまり、

文科省\大学| 賛成        | 反対
—————————————————————————————
守る    | 独法化トップ30  | 現状維持トップ30
—————————————————————————————
守らない  | 独法化トップ30以外| 現状維持


したがって、この場合では、大学は最悪でも現状維持であるわけだから
独法化には反対するだろう。


しかし、どうだろう?もし文部省が約束を守ったのに、独法化に
反対したら、国民がその大学に怒って廃止すると言ったとしたら?
この場合は、

文科省\大学| 賛成        | 反対
—————————————————————————————
守る    | 独法化トップ30  | 廃止
—————————————————————————————
守らない  | 独法化トップ30以外| 現状維持


したがって、廃止のリスクを回避するためには、独法化に賛成に回る
だろう。しかし、実際には、他の大学もあり、他がやっぱり賛成に
回れば、結果的にトップ30にはなれないかも知れない。

まあ、こういうわけで、実際に大学がどう協力するのか知らないが、
大学の独立行政法人化問題の問題は、一種の「非協力的ゲーム」だと
いうことだけは確かなようですなー!

いやはや、ナッシュ博士やアメリカの学者は偉いですなー!


(つづく)

  by Kikidoblog | 2012-11-16 12:08 | 昔の拙ブログ・記事

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