たまには「正義の話をしよう」:天下のハーバード大で世紀の「不正義」発覚!?
「これから正義の話をしよう」
というのは、マイケル・サンデル教授の常套句である。
サンデル教授インタビュー 混迷の時代だからこそ「正義」の話をしよう
著書「これからの『正義』の話をしよう」が日本でも40万部近いベストセラーとなっている米国の政治哲学者、マイケル・サンデル氏。大学の入学資格を金で買うのは悪か。家族が罪を犯したら警察に通報すべきか。現代人も過去の戦争責任を負うべきかなど、日常の言葉で「正義」を問う。今日、なぜ正義について語ることが重要なのか、来日した氏に聞いた。(聞き手は文化部 白木緑)
この人のお得意のレトリックは「囚人のジレンマゲーム」というものだが、即興でそれを駆使する業師である。だからだれもが手品のように引っかかる。ただそれだけサ。
さて、このサンデル教授のお膝元、勤務先のハーバード大学で、歴史上最悪の不正事件が持ち上がり、いっきに70人の停学処分(英語では、サスペンション, suspentionという)を受けた。ちなみに保護観察処分は、プロベーション(probation)という。以下のものである。
試験不正で70人停学 ハーバード大「最大規模」
2013.2.3 16:56
米ハーバード大学は、昨年の試験で発覚した大規模な不正行為の調査を終え、学生約70人を停学処分にした。同大学は調査、処分の詳しい内容を明らかにしていないが、停学は通常1~2年としている。米紙ニューヨーク・タイムズが2日報じた。同紙は「同大学で最大規模の不正」とした。
不正は昨年5月に発覚。279人が受講した政治の授業の試験で、約半数が不正に関与した疑いが持たれ調査を受けた。停学のほか数十人が単位を「仮及第」とする処分を受けた。同大学では年平均17人が「学問上の不正」を理由に停学になっている。
試験は自宅で資料に当たることが許されるリポート形式だったが、複数の答案の言葉遣いが全く同じだったり、酷似していたりしていたため、禁じられている他の学生との相談や、答案の引き写しが行われた可能性が浮上した。(共同)
これでは、いったいサンデル教授はハーバード大学でどんな正義の話をしていたのでしょうナア?ということになる。世界中で稼ぎまくって出歩いていたから、自分の学校の生徒たちにまで目が届かなかったということだろうか?
さて、これを「囚人のジレンマゲーム」で理解してみよう。
縦軸にサンデル教授の戦略、横軸にハーバードの学生たちの戦略をとることにする。すると、こうなる。
サンデル\学生 | 不正しない◯ | 不正する ☓
―――――――――――――――――――――――――――――――
正義の話をする ◯| あ(◯、◯) |い(◯、☓)
―――――――――――――――――――――――――――――――
正義の話をしない ☓| う(☓、◯) | え(☓、☓)
―――――――――――――――――――――――――――――――
(あ)サンデル教授が正義の話を行い、生徒は不正をしないという場合が、(◯、◯)。
(い)サンデル教授が正義の話を行うが、生徒が不正をするという場合が、(◯、☓)。
(う)サンデル教授が正義の話をせず、生徒が不正をしないという場合が、(☓、◯)。
(え)サンデル教授が正義の話をせず、生徒が不正をするという場合が、(☓、☓)。
さて、(あ)が良いには間違いないが、実際には(え)となった生徒が出たということである。
これはハーバード大の学生が、「囚人のジレンマ」における囚人の立場だとすれば、サンデル教授が話しをしようがしまいが、不正をしないようにするにはどうするかということである。
これは、(い)(◯、☓)の場合のペナルティーと(え)(☓、☓)の場合のペナルティーの兼ね合いが大事ということになる。
例えば、よく知られた「囚人のジレンマ」の場合はこうなる。
このジレンマには、4種類の選択枝がある。
共に黙秘、片方が黙秘、共に否定。つまり、
相手\自分| 黙秘 | 否定
―――――――――――――――――――――――――――――
黙秘 | 黙秘、黙秘 | 黙秘、否定
| 共に懲役5年 | 相手死刑、自分無罪
―――――――――――――――――――――――――――――
否定 | 否定、黙秘 | 否定、否定
| 相手無罪、自分死刑 | 共に無期懲役
相手\自分| 黙秘 | 否定
――――――――――――――――――――――――
黙秘 | 共に良い | 自分に最良
――――――――――――――――――――――――
否定 | 自分に最悪 | 共に悪い
一般に、人間は自分に最悪を避けるための戦略を採用する。したがって、囚人のジレンマの場合は、相手が否定し、自分が黙秘の場合が自分に最悪となる場合だから、これを避けるための戦略を採用する。それゆえ、自分の罪を否定しておけば、最悪でも無期懲役で死罪は逃れられる。だから、囚人はこの条件付けの場合には、常に「嘘をつく」のだ、というのが、「囚人のジレンマ」という数学である。
同様にして、サンデル教授の場合では、(い)のサンデル教授が教えたのに不正をした場合に最悪の結果をもたらす、つまり、即座に「退学」というペナルティーにしておくと、サンデル教授の話の有無にかかわらず、学生は不正をしないという戦略を選択するだろうということになるわけですナ。
したがって、次のようにペナルティーをつけておくのがもっともらしいということになる。
サンデル\学生| 公正 | 不正
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
講義 | (あり、公正) | (あり、不正)
| 両者お咎め無し | 教授責任なし、学生退学
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
非講義 | (なし、公正) | (なし、不正)
| 教授責任あり、学生なし| 教授責任あり、学生停学
サンデル教授よ、ハーバードの学生に「たまには正義の話をしてやれ」ということでしょうナア。
いずれにせよ、ハーバード大は世界ランク1,2位の大学である。そこの学生は、世界のグローバル企業のエリートになる。いわば、「グローバルエリート養成所」である。そんな大学でこれほどまでに大きな不正が行われるというのでは示しがつかない。
かつて100年ほど前にアメリカ文学の父と呼ばれたラルフ・エマーソン
エマソン論文集が、「アメリカの学者」という講演をハーバード大で行ったのだが、これは昨年に亡くなったスティーブ・ジョブズのスタンフォード大の卒業式講演に匹敵するものであった。当時のアメリカの若い学者たちに大きな影響を与えたのである。ヨーロッパのものまねやパクリばかりしていてはいけないよ、自分の頭で考える習慣をつけよ、と説いたのであった。いまの韓国朝鮮人や中共シナ人にまさにピッタリの言葉であるが、それからして徐々にアメリカは「世界のアメリカ」に育ったのである。
もっとも、サンデル教授はイギリス人だから関係ないか?
いやはや、ハーバードは廃校しろ! この問題も囚人のジレンマ問題だが、みなさんのための宿題としておこう。
【宿題】
問題1:ハーバード大の存続か廃校かを囚人のジレンマのアイデアを使って論じよ。
問題2:監督や教官による体罰の問題を囚人のジレンマ風に議論せよ。
by Kikidoblog | 2013-02-03 19:00 | アイデア・雑多