ファミリービジネス5:「回転ろくろ式研磨機」と「スカラベ」
さらに古くなる。
(お)回転ろくろ式研磨機
私が生まれた昭和32年頃、当時の甲府市の宝石研磨業者は「回転ろくろ式研磨機」を使っていたようである。これは、いわゆる瀬戸物などを作るロクロから応用されたもので、そのロクロの鋼鉄製の円盤に直接宝石を擦りつけて研磨するというものである。
普通の陶芸用のロクロというものは、こんなものである。
http://www.tabitabi-taipei.com/topics/20100120/taiken.php
こういうロクロの上に粘土を置いて、ロクロを回して回転体を作っていく。
しかし甲府の研磨業者はこんなふうには使わなかった。この回転部の金属に磨き粉(研磨剤)と水を流し込んで(垂らして)、そこに宝石を突っ込んで回転金属で磨くのである。
職人技紹介
私が高畑町に住んでいた頃、我が家の工場にはそんなロクロが何台もあり、そのそれぞれに職人さんが張り付いて、ロクロの上で宝石を磨いていたのである。
これは「バレル研磨」法が実現されるまで続いたのである。
金属の棒ににかわのような接着剤で磨きたい面を上にしてたくさんの水晶のさざれを貼り付ける。それを右手に持って、左手で研磨剤の緑色の粘土を握って、それをロクロにすこしずつつけながらその上の緑の場所に研磨する宝石をこすりつける。まさに研磨である。
こういうのが当時の職人技であった。
私が生まれた時には、私が眠っている隣の部屋が工場で、そこで親父たちが日夜研磨していたそうである。
そのためにみんな右手が削れと圧力で変形する。それが職人の勲章であった。
そんな時代に革命をもたらしたのが「バレル研磨機」であったというわけである。
おそらくいまではほとんど目にしなくなったのではないだろうか?
当時1960年代はアフリカがすこし近代化し始めたころである。特にアラブの国々が石油で大分潤ってきた。アフリカ人はイスラム教を信仰する。特にアラブ人にとって、スカラベ(フンコロガシ)は神の使いである。
http://coquette77.exblog.jp/2489533
日本人の縁起物というものである。だから、スカラベの入ったネックレスや指輪を必需品とする。
ある時、ユダヤの商人が甲府にやってきた。そして、スカラベを掘った水晶
が欲しいと言ってきた。そこで、何社かが集まって商談した。そこで目にしたものはまさにユダヤ商法だったらしい。
(私の記憶にあるもので一番近いのはこんなもの。)
がとにかく、そういうスカラベの形をした石をこの回転式ロクロ研磨機で擦っていたのである。これは結構長く続いた商品であったらしい。おかげで我が家はさらに大きく発展していくきっかけを作れたのである。
ところで、上のスカラベの形は何を使って掘ったかというと、これが歯医者さんが使う装置とまったく同じ研磨機であった。歯科医にいくと、ギュイーーーーンという音の出る先が回転する研磨機で歯を削る。あれである。こんなもの。
先に
ものがついた回転研磨機である。当時我が家にも何台もこういうものがあった。それを使って、歯医者さんが歯を削るようにして、一個一個の宝石の表面にスカラベの絵を描いたのである。
(つづく)

by kikidoblog | 2013-11-05 15:19 | ファミリービジネス