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数セミ特集「超幾何の原点」:青本博士とサザーランド博士と私の「超幾何の接点」!?

みなさん、こんにちは。

ソチ・オリンピックもたけなわで、そっちをメモしておきたいものも多いが、今回はこれ。

今日、私の友人の青本和彦博士(名大名誉教授、数学辞典や岩波の数学本の編集者)から、通称「数セミ」こと「数学セミナー」の3月号
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を送っていただいたのである。その中に青本博士の解説「準超幾何関数について」が出ている。これである。
超幾何の原点

オイラーとガウスの超幾何──原岡喜重
リーマンの論文に登場する超幾何──寺田俊明
確率・統計に登場する超幾何──井上潔司+竹村彰通
代数方程式と超幾何関数──加藤満生
準超幾何関数について──青本和彦

サーストンからの手紙/8つの3次元幾何学の謎に迫る
メタファーと円板モデル──阿原一志

基礎講座・見える群論入門
方程式と群:分解体の形──脇 克志

森毅の主題による変奏曲
積分篇(2)──梅田 亨

coffee break/ありがとう数学!/In Praise of Mathematics──秋葉忠利
こどもの眼・おとなの頭/帯をねじって裂く──時枝 正
数セミパズル部通信 ニコリ号外/シャカシャカ──ニコリ
折って楽しむ折り紙セミナー/アワーグラス・プリズム ──前川 淳
エレガントな解答をもとむ ●出題=鈴木治郎+増田一男 ●解答=上原隆平+岩沢宏和+秋山仁

恒星間空間をめざして/惑星探査機ボイジャーの36年の航跡──半揚稔雄
パーフェクト・シャッフルの数理(2)──石原 徹
量子測定の数理と不確定性原理(12)量子集合論──小澤正直

数セミ メディアガイド 
『わかっているようでわからない 数と図形と論理の話』──伊藤浩行
『世界を変えた17の方程式』──関口次郎

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この「準超幾何関数」というのは、リーマンの超幾何関数の拡張である。長いことその存在は信じられていたが、明確には定義されず、研究が滞っていたものである。

それが、物理学の「分数排他統計」という現代理論物理学の問題を解こうとするうちに、いざそれを解いてみれば、なんとリーマンの超幾何関数の見事な拡張になっていた。そればかりか、ロシア・アカデミーの伝説の大数学者ゲルファント博士や若干2、3人の数学者の強者だけが挑戦していただけという分野の突破口を開いたものである。

なんとそんな難しい「準超幾何関数の理論」を数学セミナーで初めて今回一般公開したのである。それが青本和彦博士
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である。小平邦彦、岡潔、高木貞治、こういった東大の俊雄の古き良き日本の数学の伝統、解析学の伝統を引き継いでいるのが青本博士である。なかなかこういうすごい人はいない。

さて、その記事には何人かの物理学者の名前が出てくる。もちろん、私は共同研究者だったから、私の名前も出ている。が、そもそもそういう理論の先駆けを作った人物、その名前はビル・サザーランド博士(ユタ大名誉教授)
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である。その名前が出ている。

このビル・サザーランド博士が、私がユタ大でPh. D. をもらった時の私の指導教官であった。サザーランド博士の指導教官がノーベル賞学者のチェン・ニン・ヤン博士
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である。「対称性の破れ」の発見でノーベル物理学賞を若くして受賞した。そのヤン博士の一番弟子がビル・サザーランド博士である。

そして、そのビル・サザーランド博士が、Ph. D.を取得した時の推薦状の推薦文がすでにレジェンドである。一般にも日本の理論物理学者にも知られていない。なぜなら私が教えていないから。なんとそれは、たった一行の推薦文:
「He is better than me! 」
であったというのである。もちろん、ヤン教授はだいぶ前にノーベル賞を取っていた。

そうやってPh. D.取得後すぐに、カリフォルニアのカルテクでポスドクをやっていた頃の1970年代初期に考え出されたものが、今では伝説中の伝説的理論となり、「カロゲロ・サザーランド模型」にその名を刻んだ理論である。

その後、何十年も世界中の理論物理学者たちがこの理論模型を研究していくうちに、純粋数学や応用数学、そしてもちろん理論物理学、可積分系や非線形理論など数多くの分野で最重要な理論になっていったのである。

そして物性物理では分数排他統計、素粒子ではエニオン、こういった理論物理の最先端で、それも解けるモデルとして数多くの理論の雛形となって行ったのである。

しかしながら、それを突き詰めていくと、たった一種類の統計的粒子の場合でしかなかった。それを多種の統計の粒子群の問題に適用すると、どうしても解かなければならない方程式「Sutherland-Wu方程式」と私が命名したものが出てきたのである。

これを解くのに、あるアイデアが浮かんだ。この証明が正しいかどうかを当時国内の数学者に何人か問い合わせたのである。その1人が、名大数学の看板教授となっていた青本博士であったが、私が当時、徳島阿南の田舎に住む、単なるフリーの理論物理学者であったにもかかわらず、「君の証明は間違っているが、面白いところがあるから来て話してくれないか?」ということで、私の話に聞く耳をもってくれたのであった。

ちなみに、日本の数学者は「数学は敷居が高い」というように、「日本の数学者自体が敷居が高い」。まず人の話を聞いてくれるという数学者はまずめったに日本にはいない。だからたいていの理論物理学者は海外の数学者と相談するのである。だから、無名の人の話に興味を持つということ自体、青本博士の人となりを表すものなのである。実際、実に気さくで聡明な良き数学者である。

そうして2人で何年か共同研究していくうちに出来たものが「準超幾何関数」であったのである。

これはいまだに謎めいているものである。しかしながら、この数学理論は当時スーパーコンピュータの代数演算計算を使って研究した欧州の理論物理学者のグループと競争して、見事に我々が勝利したのであった。いわば、スーパーコンピュータに勝ったのである。

その後、ロシアの大数学者のゲルファント博士のグループだけが引用してくれたという、年代物の研究。ワインで言えば、プレミア物というのだろうか、そういう研究である。真に青本博士の研究は、数学の王道を行っているものであるというわけですナ。

さて、その1998年、我が家は京大に招かれたビル・サザーランド博士に会いに行った。その時の写真がこれ。
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1998年、京都の知恩寺にて

一方のYong-Shi Wu博士はこの方。
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中国共産党が今のようになってしまう頃、いわゆる「四人組の時代」の粛清の時代にアメリカに逃れた理論物理学者である。我々が付き合うべき中国人とはこういう人たちである。また、中国が民主化するとすれば、こういう人たちの力をおいては他にないだろうという感じの博士である。精力的な勉強家である。たしか北京大学でトップだったとか。

ところで、このサザーランド博士も過去になんどかノーベル賞にノミネートされている。いまはノーベル賞は、科学はロックフェラー賞、経済学はロスチャイルド賞と大企業賞と変わり果ててしまったから、まずサザーランド博士のような純粋な理論物理学者がノーベル賞に輝く時代ではない。拙著の下巻に書いた通りであるというわけですナ。

いやはや、いまノーベルが墓場からゾンビになって復活したらどうするだろうか?




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  by kikidoblog | 2014-02-13 16:40 | アイデア・雑多

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